生活保護を受給している障害者の方には、基本的な生活扶助に加えて「障害者加算」という追加の支援が受けられる制度があります。
しかし、具体的な金額や対象者の条件、申請の手続きについて詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、障害者加算の仕組みから実際の申請方法まで、わかりやすく解説します。
障害者加算の基本を理解しよう

生活保護を受給している、または申請を検討している障害のある方にとって、障害者加算は生活を支える重要な制度です。
この加算制度を正しく理解し活用することで、より安定した生活を送ることができます。
障害者加算とは何か
障害者加算とは、生活保護を受給している障害者の方に対して、通常の生活扶助費に上乗せして支給される金額のことです。

障害があることで生じる特別な生活上の需要(医療費、介助費、特別な食事など)を考慮し、最低生活費を引き上げる仕組みとなっています。

厚生労働省の定める生活保護制度において、障害者加算は「加算」の一つとして位置づけられています。
基本的な生活扶助に加えて、障害の程度に応じた追加の支給が行われるため、受給者の実質的な生活水準の向上につながります。
なぜ障害者加算が必要なのか
障害のある方は、日常生活において健常者とは異なる様々な支出が発生します。
- 特別な医療用具や補装具の維持費
- 移動の際の交通費増加
- 介助者への謝礼
- 栄養管理のための特別な食事
- 通院にかかる費用
これらの追加的な経済負担を軽減し、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するために、障害者加算が設けられているのです。
障害者加算の対象となる人

障害者加算を受給できるのは、一定の条件を満たす障害者の方です。
ここでは、具体的な対象要件について詳しく解説します。
身体障害者の場合
身体障害者手帳の交付を受けている方が対象となります。
ただし、すべての等級が対象となるわけではありません。
対象となる等級
- 1級から3級の身体障害者手帳をお持ちの方
身体障害者手帳は、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、内部障害など、様々な障害種別に応じて交付されます。
4級以下の方は、原則として障害者加算の対象外となりますが、他の要件を満たせば対象となる場合もあります。
知的障害者の場合
知的障害の方については、療育手帳(地域によっては愛の手帳、みどりの手帳などの名称)の交付を受けている方が対象です。
対象となる判定区分
- 重度(A判定、A1、A2など)
- 中度(B1判定など、自治体により異なる)
療育手帳の判定基準は自治体によって若干異なりますが、おおむねIQ(知能指数)や日常生活能力などを総合的に評価して判定されます。
精神障害者の場合
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方が対象となります。
対象となる等級
- 1級の精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方
- 2級の手帳をお持ちで、一定の要件を満たす方
精神障害の場合、手帳の等級だけでなく、実際の日常生活能力や社会生活能力も考慮されることがあります。
統合失調症、双極性障害、重度のうつ病などで、日常生活に著しい制限がある場合が該当します。
国民年金法による障害等級の認定を受けている場合
障害年金の受給者も、障害者加算の対象となる可能性があります。
対象となるケース
- 障害基礎年金1級の受給者
- 障害基礎年金2級の受給者(条件により)
- 障害厚生年金の受給者(等級による)
障害年金を受給している場合、手帳を持っていなくても障害者加算が認められることがあります。

福祉事務所に障害年金証書を提示して相談してください。

特別児童扶養手当の対象児童
20歳未満の障害児についても、以下の場合に障害者加算が適用されます。
- 特別児童扶養手当1級の対象となっている児童
- 特別児童扶養手当2級の対象となっている児童(条件により)
子どもの障害については、医師の診断書や療育手帳などに基づいて判断されます。
障害者加算の金額はいくら?

障害者加算の具体的な金額について、地域や世帯状況別に詳しく見ていきましょう。
2024年度の障害者加算額
障害者加算の金額は、お住まいの地域(級地区分)と障害の程度によって異なります。
全国は生活費の違いを考慮して1級地から3級地まで区分されています。
1級地の場合(東京都区部など)
- 障害者加算:月額26,810円
- 重度障害者加算:月額39,810円
2級地の場合(地方都市など)
- 障害者加算:月額24,900円
- 重度障害者加算:月額37,000円
3級地の場合(町村部など)
- 障害者加算:月額22,990円
- 重度障害者加算:月額34,190円
これらの金額は毎年4月に改定される可能性があります。
最新の金額については、お住まいの自治体の福祉事務所にお問い合わせください。
重度障害者加算とは
障害の程度が特に重い場合には、通常の障害者加算よりも高額な「重度障害者加算」が適用されます。
重度障害者加算の対象
- 身体障害者手帳1級、2級の方
- 療育手帳のA判定(最重度・重度)の方
- 精神障害者保健福祉手帳1級の方
- 障害基礎年金1級の受給者
重度障害者加算は、通常の障害者加算よりも約1万円から1万5千円程度高い金額が設定されています。
具体的な受給例
実際にどのくらいの金額を受給できるのか、具体例で見てみましょう。
【ケース1】東京都内在住の単身者(身体障害者手帳2級)
- 生活扶助基準額(1級地-1):約79,230円
- 住宅扶助:上限53,700円
- 重度障害者加算:26,810円
- 合計:約159,740円
【ケース2】地方都市在住の2人世帯(夫婦、うち1人が知的障害・療育手帳B1)
- 生活扶助基準額(2級地-1):約119,200円
- 住宅扶助:上限43,000円
- 障害者加算:24,900円
- 合計:約187,100円
これらはあくまで概算です。
実際の支給額は、年齢、世帯構成、地域、その他の加算などによって変動します。
障害者加算の申請方法と必要書類

障害者加算を受給するためには、適切な手続きが必要です。
ここでは、申請の流れと必要な書類について説明します。
新規に生活保護を申請する場合
生活保護の申請と同時に障害者加算の適用を受けることができます。
申請の流れ
- お住まいの地域を担当する福祉事務所に相談
- 生活保護申請書の提出
- 障害に関する書類の提出
- 福祉事務所による調査
- 保護決定通知(通常14日以内、最長30日)
初回の相談時には、障害者手帳や障害年金証書などを持参すると、スムーズに手続きが進みます。

すでに生活保護を受給している場合
生活保護受給中に障害の認定を受けた場合や、障害が悪化して等級が変更された場合には、追加で障害者加算の申請が必要です。
手続きの方法
- 担当のケースワーカーに連絡
- 障害者手帳や診断書などの新しい書類を提出
- 世帯状況の再確認
- 加算の適用開始
障害者手帳の交付を受けたら、速やかにケースワーカーに報告しましょう。

適用は原則として報告があった月から開始されます。
必要書類一覧
障害者加算の申請には、以下のような書類が必要となります。
必須書類
- 身体障害者手帳、療育手帳、または精神障害者保健福祉手帳
- 障害年金証書(受給している場合)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- マイナンバーがわかるもの
必要に応じて提出する書類
- 医師の診断書(手帳申請中の場合など)
- 特別児童扶養手当証書(障害児がいる場合)
- 障害福祉サービス受給者証
- 通院記録や治療経過がわかる書類
書類の有効期限や更新時期についても注意が必要です。
精神障害者保健福祉手帳は2年ごと、身体障害者手帳は障害の種類によって再認定が必要な場合があります。
障害者加算と他の制度との関係

障害者加算は、他の福祉制度や手当と併用できる場合とできない場合があります。
正しく理解して、最大限に活用しましょう。
障害年金との併給
障害年金と生活保護の障害者加算は、基本的に併給が可能です。
仕組み
- 障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金)を収入として申告
- 最低生活費から障害年金額を差し引いた金額が生活保護費として支給
- 最低生活費の計算には障害者加算が含まれる
例えば、障害基礎年金1級を受給している方の場合、年金額は月額約81,000円(2024年度)です。
最低生活費が15万円(障害者加算含む)であれば、差額の約69,000円が生活保護費として支給されます。
特別障害者手当との関係
特別障害者手当(月額27,980円、2024年度)は、重度の障害により日常生活で常時特別な介護を必要とする20歳以上の在宅障害者に支給される手当です。
生活保護との関係
- 特別障害者手当を受給すると、その金額は収入認定される
- ただし、最低生活費の算定には障害者加算が含まれる
- 結果として、手当分だけ生活保護費が減額される仕組み
実質的な受給額は変わらないケースが多いですが、手当の支給要件を満たす場合は申請することをおすすめします。

障害福祉サービスとの併用
障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス(居宅介護、就労継続支援など)は、生活保護受給者でも利用できます。
自己負担について
- 生活保護受給者は障害福祉サービスの利用料が無料
- サービス利用に伴う食事代などは実費負担の場合もある
- 生活保護費の範囲内で利用可能
ケースワーカーと相談しながら、必要なサービスを組み合わせて利用することが重要です。
医療費の取り扱い
生活保護受給者は、医療扶助により医療費の自己負担がありません。

障害者の医療について
- 通常の医療は医療扶助でカバー
- 障害に関連する医療費も医療扶助の対象
- 補装具や日常生活用具は別途申請が必要な場合がある
障害者加算は、医療費以外の生活上の追加費用を補うためのものであり、医療費とは別に支給されます。
障害者加算を最大限活用するためのポイント

障害者加算の制度を理解したうえで、生活をより安定させるための実践的なアドバイスをお伝えします。
定期的な見直しを忘れずに
障害の状態は時間とともに変化することがあります。
定期的に以下の点を確認しましょう。
チェックポイント
- 障害者手帳の更新時期(精神障害者手帳は2年ごと)
- 障害年金の更新診断書の提出時期
- 障害の状態の変化(悪化または改善)
- 新たな障害の発生
状態が変化したら、速やかにケースワーカーに報告することで、適切な支援を受けられます。
ケースワーカーとの良好な関係構築
ケースワーカーは、あなたの生活を支援するパートナーです。
良好な関係を築くことで、より適切なサポートが受けられます。
コミュニケーションのコツ
- 定期的な面談に誠実に対応する
- 生活状況の変化は速やかに報告する
- わからないことは遠慮せず質問する
- 困りごとは早めに相談する
ケースワーカーは多くの受給者を担当していますが、あなたの状況を理解し、最適な支援を提供しようと努めています。
地域の支援機関も活用する
生活保護の制度だけでなく、地域の様々な支援機関を活用することで、より豊かな生活が送れます。
活用できる機関
- 障害者相談支援事業所:生活全般の相談に対応
- 地域活動支援センター:日中活動の場を提供
- 基幹相談支援センター:総合的な相談窓口
- 障害者就業・生活支援センター:就労支援
これらの機関は無料で利用でき、専門的なアドバイスを受けられます。
家計管理のポイント
障害者加算を含めた生活保護費を計画的に使うことで、安定した生活が送れます。
効果的な家計管理
- 収入(生活保護費)と支出を記録する
- 必要な支出を優先順位づけする
- 障害に関連する特別な支出を把握する
- 少額でも計画的に貯蓄する(福祉事務所に相談)
家計簿アプリなどを活用すると、管理がしやすくなります。ケースワーカーに相談すれば、家計管理のアドバイスも受けられます。

障害者加算に関するよくある質問

障害者加算について、多くの方から寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q1. 障害者手帳を申請中ですが、加算は受けられますか?
A. 手帳の申請中であっても、医師の診断書など障害の程度を証明できる書類があれば、暫定的に加算が認められる場合があります。福祉事務所のケースワーカーに相談し、診断書のコピーなどを提出してください。手帳が交付されたら、速やかに提示する必要があります。
Q2. 障害の等級が変更されたら、加算額も変わりますか?
A. はい、変わります。障害の状態が改善または悪化して等級が変更された場合、それに応じて加算額も見直されます。等級変更の通知を受けたら、すぐにケースワーカーに報告してください。報告が遅れると、過払いや未払いが発生する可能性があります。
Q3. 複数の障害がある場合、加算は重複して受けられますか?
A. 原則として、障害者加算は1人につき1つです。複数の障害がある場合でも、最も重度の障害の等級に基づいて加算額が決定されます。ただし、障害の状況によっては、特別な配慮が行われる場合もあるため、詳しくはケースワーカーに相談してください。
Q4. 精神障害で通院しているだけでは加算は受けられませんか?
A. 通院しているだけでは加算の対象となりません。精神障害者保健福祉手帳の交付を受けるか、障害年金の認定を受ける必要があります。主治医に相談し、手帳申請の可能性について確認してみてください。手帳の取得には、初診から6ヶ月以上経過していることなどの条件があります。
Q5. 障害者加算を受けると、就労収入はどうなりますか?
A. 障害者加算を受けていても、働くことは可能です。就労収入がある場合、基礎控除や障害者控除が適用され、一定額までは保護費から差し引かれません。就労による自立を支援するため、働いた分だけ手元に残るお金が増える仕組みになっています。就労を希望する場合は、ケースワーカーに相談し、就労支援を受けることもできます。


Q6. 施設入所している場合も障害者加算は受けられますか?
A. 障害者支援施設などに入所している場合、生活保護の適用形態が異なります。入所施設での生活は「施設保護」となり、加算の仕組みも在宅の場合とは異なります。施設の種類や入所形態によって対応が変わるため、施設の相談員や福祉事務所に確認してください。
まとめ:障害者加算で安心した生活を

生活保護の障害者加算は、障害のある方の生活を支える重要な制度です。
最後に、重要なポイントを整理しておきましょう。
障害者加算の要点
- 障害者手帳や障害年金の認定を受けている方が対象
- 月額22,990円から39,810円程度の加算が受けられる(地域・等級による)
- 生活保護申請時または受給中いつでも申請可能
- 他の福祉制度との併用も可能(内容による)
- 定期的な見直しと適切な報告が重要
今すぐできること
- 障害者手帳をまだ取得していない方は、主治医に相談
- すでに生活保護を受給中の方は、ケースワーカーに障害者加算について確認
- 障害の状態に変化があった場合は、速やかに報告
障害者加算は、申請しなければ受給できません。
該当する可能性がある方は、遠慮せずに福祉事務所に相談してください。
生活保護制度は、憲法第25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するためのものです。
障害のある方が尊厳を持って生活できるよう、障害者加算を含めた様々な支援が用意されています。
この制度を適切に活用し、一人ひとりが自分らしい生活を送れることを願っています。
わからないことや不安なことがあれば、一人で悩まず、必ず専門家に相談してください。

