人が亡くなった時、葬儀を行い、故人とのお別れをします。
では、親族が亡くなって生活保護受給者が喪主になった場合や生活保護受給者自身がなくなった場合の葬儀費用はどうなるのでしょうか?
実は、どちらのパターンでも葬儀費用は生活保護費から支給されます。
しかし、葬儀費用が支給されるには、細かい条件があり、少しでも条件を満たさないと支給されません。
そこで、このページでは、葬儀費用が支給される条件や、葬儀費用として、いくら支給されるのか?葬儀費用を支給してもらうための手続き方法等、葬儀に関する様々な疑問について、わかりやすくご説明します。
生活保護の葬儀費用は葬祭扶助から支給される
生活保護の受給が開始されると、生活保護受給者は8つの扶助を受けることができます。
この8つの扶助の中に生活扶助や住宅扶助があり、これらが毎月の生活保護費として支給されたり、医療扶助により、あらゆる医療行為を無料で受けることができます。
そして、この8つの扶助の中に葬祭扶助と言うものがあり、この葬祭扶助により、葬儀に掛かる費用が生活保護費から支給されます。
ただし、この葬祭扶助は支給の条件等が、他の扶助とくらべても少し特殊です。
葬儀費用が支給される条件
葬儀費用が生活保護費から支給されるには、以下の条件のいずれかを満たしている場合です。
- 葬儀を執り行う喪主が生活保護受給者の場合
- 亡くなった生活保護受給者に身寄りがない場合
上記を見て「あれ?」って思った方も多いと思いますが、実は葬儀費用の支給対象者は生活保護受給者に限られません。
生活保護費を生活保護受給者以外に支給するとは一体どういうことなのか?それぞれの条件について詳しく見ていきましょう。
葬儀を執り行う喪主が生活保護受給者の場合
生活保護受給者の親族が亡くなり、生活保護受給者が葬儀を執り行う喪主になった場合、喪主である生活保護受給者は葬儀費用を当然捻出することができません。
そのため、ケースワーカーに相談・申請をすることで、葬儀費用を生活保護費から支給してもらうことができます。
ただし、亡くなった親族に遺産がある場合は、その遺産を葬儀費用に充ててもらい、それでも足りない葬儀費用だけが支給されます。
亡くなった生活保護受給者に身寄りがない場合
亡くなった生活保護受給者に身寄りがなく、家主や民生委員、後見人など遺族・親族以外が葬儀を手配する場合も葬儀費用が生活保護費から支給されます。
また、生活保護受給者に身寄りがあったとしても、親族の方が遺骨の引き取りを拒否して第三者が葬儀を執り行う場合や、その親族が生活保護を受給していなくても葬儀費用を負担すると生活保護に陥る可能性があると判断されれば、葬儀費用が生活保護費から支給されます。
なお、親族の方が葬儀を執り行う場合、葬儀費用を支出することができない程、本当に資産や収入がないのか?を確認する必要があるため、生活保護の申請時と同様に喪主となる親族に対して金融機関調査や収入調査等が実施されます。
各種調査の結果、親族の方が葬儀費用を支出すると、最低限度の生活を維持することができないと判断されれば、葬儀費用が支給されます。
葬祭扶助を利用する場合は必要最低限の葬儀しかあげられない
生活保護から支給される葬儀費用の金額については、生活保護の葬祭扶助基準額と葬祭地の市町村条例に定める火葬に要する費用のどちらか高い方の金額が支給されるため、明確にいくらとは言えませんが、大体20万円~30万円程度の金額になります。
この約20万円~30万円の葬儀費用全額が生活保護費から支給されるんですが、ここで注意点が1つあります。
それは、生活保護費から支給される葬祭扶助の対象となる葬儀の内容は必要最低限の葬儀に限定されると言う点です。
必要最低限の葬儀とは通夜や告別式を行わない、火葬式(直葬)と呼ばれるものになります。
例えば生活保護費から葬儀費用として20万円支給されるから、自分達で30万円負担すれば50万円の葬儀ができる!と考える方がいらっしゃいますが、そういう使い方はできません。
この例の場合、必要最低限の葬儀ではないため、生活保護費から葬儀費用は一切支給されず、葬儀にかかった費用50万円全額を自己負担しなければいけません。
このように生活保護費から支給される葬儀費用を葬儀代の一部を補填するような使い方はできません。
仮に1円でも最低限度の葬儀代を超える場合は、支給対象となりませんので、気をつけましょう。
宗教・宗派によっては葬儀費用が支給されない場合がある
葬儀の形は、宗教・宗派ごとに異なります。
日本で行われている宗教・宗派の葬儀の種類は仏教葬、キリスト教葬、神葬祭、友人葬、無宗教葬等があります。
基本的には、これらの宗教・宗派の葬儀を自由に選択をして良いんですが、宗教・宗派によっては、生活保護費の葬儀費用の対象とならない場合があります。
その理由は、宗教・宗派によって、最低限度の葬儀費用が異なるからです。
大抵の宗教・宗派は、最低限度の葬儀費用で葬儀を挙げてくれますが、中には最低限度の葬儀費用では葬儀を挙げてくれない宗教・宗派があります。
実際に私が担当したケースでも、ある宗教・宗派の場合、その金額では葬儀を挙げられないから、支給金額を増やして欲しいと相談を受けたことがあります。
しかし、生活保護の制度上、宗教・宗派によって、葬儀費用の支給金額を変えることはできないため、葬儀費用を全額自己負担するか、別の宗教・宗派で葬儀を挙げるか、申請者自身が葬儀費用の交渉をするか、のどれかを申請者が選択するしかありません。
葬儀費用の申請から支給までの流れ
福祉事務所に葬儀費用の申請をするうえで最も大事なことは葬儀を行う前に相談・申請をすることです。
なぜなら葬祭扶助は葬儀費用がない人に支給されるものだからです。
仮に無理に借金等をして掻き集めたお金であったとしても葬儀費用が捻出できたのであれば、葬儀を行う資力があったと判断されるため、支給対象となりません。気をつけましょう。
では、具体的な葬儀費用の手続き方法ですが、まずは福祉事務所に相談をします。
すると、葬祭扶助の申請書をもらえますので、必要事項を記入します。
次に、葬儀社に連絡をして、葬儀費用の見積書を出してもらいます。
この時に必ず「生活保護の葬祭扶助を利用する」と伝えましょう。
そしたら、葬儀社の方から必要最低限の葬儀費用の見積もりがもらえますので、葬祭扶助の申請書と一緒に見積書を福祉事務所に提出し、葬祭扶助の許可が下りたら葬儀を執り行います。
最後に、葬儀の領収書をもらい、福祉事務所に提出したら終わりです。
なお、葬儀費用については、福祉事務所から葬儀社に直接支払ってもらう代理納付と言う方法もあります。
葬儀代を使い込んでしまったり、領収書を紛失してしまった場合は福祉事務所に葬儀代を返還しなければいけなくなるため、個人的には確実な代理納付がオススメです。
生活保護受給者が葬儀費用を貯金することは認められない
毎月支給される生活保護費の中には、家具・家電が壊れた時のための費用も含まれているため、生活保護受給者も貯金をすることが認められています。
しかし、貯金の目的がない場合や、貯金目的が不適切な場合は、その貯金は収入認定されて、生活保護費が減額されてしまいます。
そして、高齢の生活保護受給者の多くが、自身が亡くなった時のために葬儀費用を貯めていますが、残念ながら、生活保護には葬祭扶助があるため、葬儀費用のための貯金は認められず、収入認定の対象となります。
結果的に、生活保護受給者が亡くなった時に残っていた貯金が葬儀費用に使われることは問題ないため、葬儀費用を残したい場合は、ケースワーカーに貯金の目的を聞かれた時に「葬儀代」とは言わず、「冷蔵庫と洗濯機を買い替えるため」と答えましょう。
家具・家電を買い替えるためなら、貯金は認められるため、お金を残すことが可能です。
なお、貯金については、ケースワーカーが定期的に行う金融機関調査でバレるため、必ず準備しておきましょう。
近年は無縁仏の方が増えている
近年は親族はいても、絶縁関係で身寄りのない生活保護受給者が増えています。
身寄りのない生活保護受給者でも、民生委員等が葬儀の手続きをしてくれますが、葬儀後は無縁仏に入ることになります。
「無縁仏でも構わない!」と言う方も多いかもしれませんが、親族との付き合いがないと保証人がおらず、病院に入院することも難しくなるため、経済的援助は求めなくても、心理的援助は求められるような関係を親族と築いておきましょう。
まとめ
葬儀費用が支給される条件や、葬儀費用として、いくら支給されるのか?葬儀費用を支給してもらうための手続き方法等について、ご説明させていただきました。
上記をまとめると
- 生活保護の扶助の中に葬祭扶助があり、葬儀を執り行う費用が支給される
- 生活保護受給者が喪主の場合、もしくは亡くなった生活保護受給者に身寄りがない場合に葬祭扶助は支給される
- 生活保護では最低限度の葬儀費用しか挙げることができない
- 宗教・宗派によっては、葬儀費用が高く、生活保護の葬祭扶助が適用されない場合がある
- 葬祭扶助を利用する場合は、必ず葬儀を挙げる前に申請手続きをする必要がある
- 生活保護費を葬儀費用のために貯金することは認められていないため、ケースワーカーに貯金の目的を聞かれた場合は「家電の買い替えのため」と答えなければならない
- 身寄りがない場合は、無縁仏に入ることになる
となります。
その他、生活保護の支給に関する様々な疑問については、下記にまとめてありますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
https://seikathuhogomanabou.com/category/hogohi/
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