生活保護費の財源は、国が4分の3(75%)、地方自治体が4分の1(25%)を負担しています。
令和7年度(2025年度)の生活保護費の予算は約3.8兆円で、国の予算全体の約3.3%に相当します。
本記事では、生活保護費の財源の仕組み、国と地方の負担割合、税金の使われ方、地方交付税による財源保障まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。
生活保護費の財源の基本

国と地方の負担割合
生活保護費の財源は、国が4分の3(75%)、地方自治体が4分の1(25%)を負担することが法律で定められています。
負担割合の内訳
- 国の負担:75%(国庫負担金)
- 地方自治体の負担:25%(一般財源)
この負担割合は、生活保護法第75条および地方財政法第10条に基づくもので、1950年の制度創設時から基本的に変わっていません。
なぜこの割合なのか
生活保護は、憲法第25条に基づく「国民の健康で文化的な最低限度の生活を保障する」制度です。
国が主体となって実施する国の責任が大きい制度であるため、国の負担割合が高く設定されています。
一方、実際の保護の実施は地方自治体(福祉事務所)が行うため、地方にも一定の負担が求められています。
生活保護費の総額と予算

令和7年度(2025年度)の予算
令和7年度の生活保護費の予算は約3兆8,000億円です。
これは国の一般会計歳出総額115兆5,404億円の約3.3%に相当します。
予算の推移
- 令和5年度:約3.7兆円
- 令和6年度:約3.7兆円
- 令和7年度:約3.8兆円
社会保障関係費の中での位置づけ
社会保障関係費全体では約38兆3,000億円が計上されており、生活保護費はその中の約10%(2011年度は約9%)を占めます。
社会保障関係費の内訳
- 年金給付費:約12兆円
- 医療給付費:約12兆円
- 介護給付費:約3.5兆円
- 生活保護費:約3.8兆円
- その他:約7兆円
「生活保護費が国家予算を圧迫している」というのは誤解であり、政府予算全体の約3.3%に過ぎません。
生活保護費の内訳

8つの扶助
生活保護費は以下の8つの扶助で構成されています。

1. 生活扶助 食費、被服費、光熱費など日常生活費
- 予算額:約1兆円

2. 医療扶助 診察、薬剤、入院などの医療費
- 予算額:約1.8兆円(全体の約47%)

3. 住宅扶助 家賃、地代など
- 予算額:約7,000億円

4. 教育扶助 義務教育に必要な学用品費など

5. 介護扶助 介護サービスの利用費

6. 出産扶助 出産に関する費用

7. 生業扶助 就労や技能習得のための費用

8. 葬祭扶助 葬儀に必要な費用

医療扶助が約半分を占め、本人の生活に直接回るお金(生活扶助)は約1兆円です。
国庫負担金の仕組み

国庫負担の対象
国が75%を負担するのは以下の費用です。
保護費(75%負担)
- 生活扶助
- 医療扶助
- 住宅扶助
- その他の扶助
保護施設事務費(75%負担) 被保護者の入所や利用に伴う保護施設の事務費
委託事務費(75%負担) 被保護者の施設入所や私人家庭での保護委託に伴う事務費
保護施設整備費(50%負担) 社会福祉法人等が行う保護施設整備費に関しては50%の負担
国庫負担金の交付方法
国庫負担金は、厚生労働省の予算を通じて地方に支払われます。
各自治体が保護費を支給した後、国に請求し、後から75%分が交付されます。
地方自治体の負担と財源保障

地方負担の財源
地方自治体が負担する25%の財源は、以下から賄われます。
1. 地方交付税 地方財政法第11条2により、国庫負担金事業の地方負担分は地方交付税の基準財政需要額に算入されます。
2. 一般財源 地方税や地方交付税など、使途が特定されていない財源
地方交付税による財源保障
生活保護費の地方負担については地方交付税で措置される仕組みとなっており、その財源保障機能が十分である限り、生活保護受給者が増加しても、本来は財政を圧迫することはないとされています。
基準財政需要額の算定方法 単位費用×測定単位(人口)×補正係数
しかし、実際には自治体によって以下の問題が指摘されています。
問題点
- 被保護者数は実数で反映されるが、扶助単価は実額で計算されない
- 大阪市など単身高齢者が多い自治体では、実際の単価が基準財政需要額の単価より高くなる
- 特定の自治体に偏在する財政需要に十分対応できていない
国民1人あたりの負担額

年間の負担額
2018年に1世帯が1年に負担する額はおよそ7万1千円とされています。
国民1人あたりに換算すると、年間約3万円程度の負担となります。
月額換算 1人あたり月額約2,500円
この金額には、国の負担分(75%)と地方の負担分(25%)の両方が含まれています。
財源を巡る議論の歴史

2005年の三位一体の改革
2005年、国と地方の間で「三位一体の改革」の一環として、負担率を国3/4、地方1/4から国1/2、地方1/2に変更しようとする議論が行われました。
厚生労働省の見解 生活保護行政事務の実施水準が低いところほど生活保護率が高い。保護費の負担を地方に大きく負わせることで、生活保護行政事務の実施水準を向上させ、国と地方を合わせた保護費の総額を減らそうという考え。
地方六団体の反発 地方六団体は以下の理由から猛反発しました。
- 憲法第25条で国が最低生活の保障を責任を持っている
- 最低生活を保障する事務は地方自治体に裁量の幅がほとんどない
- 今後保護世帯数が増加すればその分が全て地方の負担となる
結果的に、この改革案は見送られ、現在も国3/4、地方1/4の負担割合が維持されています。
地方自治体の財政負担
政令指定都市や中核市など、被保護世帯数の半数は政令指定都市、中核市及び東京23区に集中しています。
大阪市の事例 大阪市は「4分の1の財政負担を余儀なくされる大阪市としても納得できるものではない」として、国の制度改革を求めています。


生活保護費の財源に関する誤解

誤解1:「生活保護費が国家予算を圧迫している」
事実 政府予算全体の約3.3%に過ぎず、圧迫しているとは言えない。
誤解2:「受給者の懐に全額入る」
事実 医療扶助が約半分を占め、本人の懐には入らない。住宅扶助も家主に支払われる。本人の生活に回るお金(生活扶助)は約1兆円。
誤解3:「税金の無駄遣い」
事実 憲法第25条に基づく国民の権利であり、セーフティネットとして必要不可欠な制度。
今後の課題

財源保障の充実
地方交付税による財源保障が十分でない自治体があるため、基準財政需要額の算定方法の見直しが求められています。
持続可能な制度設計
高齢化の進展により、今後も受給者数の増加が予想されます。国と地方の適切な負担のあり方について、引き続き議論が必要です。
就労支援の強化
財源の持続可能性を高めるため、就労可能な受給者への支援を強化し、自立を促進することが重要です。
よくある質問

Q1: 生活保護費は全額税金ですか?
A: はい。国の負担分(75%)は国税、地方の負担分(25%)は地方税や地方交付税から賄われています。
Q2: なぜ国が75%も負担するのですか?
A: 憲法第25条に基づく国の責任が大きいためです。最低生活の保障は国の責務とされています。
Q3: 地方自治体の財政負担は大きいですか?
A: 地方交付税で財源保障される仕組みですが、自治体によっては十分でないとの指摘があります。
Q4: 国民1人あたりいくら負担していますか?
A: 年間約3万円、月額約2,500円程度です。
Q5: 生活保護費は増え続けていますか?
A: 受給者数の増加に伴い増加傾向にありますが、政府予算全体に占める割合は約3.3%と限定的です。

Q6: 他の社会保障費と比べてどうですか?
A: 年金や医療に比べると金額は少なく、社会保障関係費全体の約10%です。

まとめ:生活保護費の財源を正しく理解する

生活保護費の財源は、国が75%、地方自治体が25%を負担する仕組みで、憲法第25条に基づく国の責任を反映しています。
財源の重要ポイント
- 国の負担:75%(国庫負担金)
- 地方の負担:25%(地方交付税で財源保障)
- 令和7年度予算:約3.8兆円
- 政府予算全体の約3.3%
- 国民1人あたり年間約3万円の負担
生活保護費の内訳
- 医療扶助:約1.8兆円(約47%)
- 生活扶助:約1兆円
- 住宅扶助:約7,000億円
- その他の扶助:残り
財源保障の仕組み
- 国庫負担金:厚生労働省予算から交付
- 地方交付税:基準財政需要額に算入
- 地方負担分は地方交付税で措置
今後の課題
- 地方交付税による財源保障の充実
- 持続可能な制度設計
- 就労支援の強化
最後に
生活保護費は、憲法で保障された国民の権利を実現するための重要な財源です。
「国家予算を圧迫している」という誤解もありますが、実際には政府予算全体の約3.3%に過ぎません。
国と地方が適切に負担を分かち合いながら、セーフティネットとして機能し続けることが重要です。
詳しい情報は、厚生労働省のホームページや自治体の福祉事務所にお問い合わせください。



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