「生活保護を受けながらペットを飼うことはできるの?」「既に飼っているペットを手放さないといけない?」生活保護の申請を考えている方や、すでに受給している方にとって、ペットとの生活は切実な問題です。
結論から言うと、生活保護を受けながらペットを飼うことは原則として可能ですが、一定の条件があります。
また、福祉事務所やケースワーカーの判断によって対応が異なる場合もあり、正確な情報を知っておくことが重要です。
本記事では、生活保護とペット飼育の関係について、法律的な根拠、認められるケースと認められないケース、ペット費用の扱い、トラブル時の対処法まで、実例を交えながら網羅的に解説します。
ペットと一緒に安心して生活するための実践的な情報をお届けします。
生活保護でペットは飼えるのか?基本ルール

法律上の規定
生活保護法には、ペットの飼育を明確に禁止する条文はありません。
つまり、法律上はペットを飼うことが禁止されているわけではないのです。
ただし、生活保護法第4条では「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」と定められています。
この「資産」にはペットも含まれる可能性があり、高額なペット(血統書付きの犬など)は「処分可能な資産」と見なされることがあります。
厚生労働省の見解
厚生労働省の生活保護運用に関する通知では、ペットの飼育について以下のような考え方が示されています。
「ペットの飼育自体を一律に禁止するものではないが、飼育に伴う費用が最低生活費を圧迫し、健康で文化的な最低限度の生活の維持に支障をきたす場合は、指導の対象となる」
つまり、ペットを飼うこと自体は禁止されていないが、ペット費用が生活を圧迫する場合は問題になる、ということです。
原則として飼育は可能だが条件がある
生活保護を受けながらペットを飼うことは原則として可能ですが、以下の条件を満たす必要があります。
1. 飼育費用を生活保護費内で賄える
ペットフードや予防接種などの費用を、生活保護費の範囲内で支払えることが前提です。

2. 健康で文化的な最低限度の生活が維持できる
ペット飼育によって、自分の食費や光熱費など必要な生活費を削ることになってはいけません。

3. 近隣住民に迷惑をかけない
鳴き声や臭い、糞尿の処理など、適切な飼育管理ができることが求められます。
4. 高額なペットでない
資産価値が高いペット(血統書付きで高値で売れる犬など)は、「処分可能な資産」と見なされる可能性があります。
5. 住居が飼育可能な物件である
賃貸住宅の場合、ペット飼育が許可されている物件である必要があります。

ペットの種類別:認められるケースと認められないケース

犬の場合
認められやすいケース
小型犬・中型犬で、既に長年飼っている場合
家族同然の存在として、精神的支えになっているペットは認められやすい傾向にあります。特に高齢者や障害者の場合、ペットが生活の質(QOL)維持に重要と判断されることがあります。
雑種犬(ミックス犬)で資産価値が低い場合
血統書がなく、売却しても価値がないと判断される犬は、「処分可能な資産」に該当しないため認められやすいです。
治療目的・介助目的の場合
障害者の介助犬や、医師から「ペットとの生活が治療に有効」と診断されている場合は、認められる可能性が高いです。
認められにくいケース
大型犬で飼育費用が高額な場合
大型犬は餌代や医療費が高額になるため、生活費を圧迫すると判断されることがあります。
血統書付きの高価な犬
ブリーダーから高額で購入した純血種の犬は、「資産」と見なされ、処分を求められる可能性があります。
多頭飼育
複数の犬を飼っている場合、飼育費用が膨大になるため、認められないか、頭数を減らすよう指導される可能性が高いです。
生活保護受給後に新たに購入する場合
既に受給中に新しく犬を購入することは、「最低限度の生活」の趣旨に反するとして認められません。
猫の場合
認められやすいケース
既に飼っている猫
犬と同様、既に家族として暮らしている猫は認められやすいです。猫は犬より飼育費用が低い傾向にあります。
拾った野良猫・保護猫
野良猫を保護して飼い始めた場合、資産価値がないため認められやすい傾向があります。
室内飼育で近隣トラブルがない場合
適切に室内で飼育し、鳴き声や臭いなどで近隣に迷惑をかけていない場合は問題になりません。
認められにくいケース
高級品種の猫(スコティッシュフォールド、ペルシャなど)
ブリーダーから高額で購入した純血種の猫は、資産と見なされる可能性があります。
多頭飼育
猫を5匹、10匹と多数飼っている場合、飼育費用の問題や不衛生な環境になる恐れから、頭数を減らすよう指導される可能性があります。
野良猫への餌やり
自宅で飼っているわけではなく、野良猫に餌を与えている場合、生活費の無駄遣いと見なされる可能性があります。
小動物の場合
ハムスター、ウサギ、インコなど
小動物は飼育費用が比較的低く、場所も取らないため、認められやすい傾向にあります。
ただし、希少種や高価な品種は資産と見なされる可能性があります。
認められやすい条件
- 飼育費用が月数千円程度で済む
- 適切な飼育環境が保てる
- 近隣に迷惑をかけない
爬虫類・両生類の場合
ヘビ、トカゲ、カメなど
一般的なペットと比較して特殊なため、ケースバイケースの判断となります。
認められにくい理由
- 飼育設備に費用がかかる(温度管理など)
- 餌代が高額になる場合がある
- 希少種は高額で取引される
熱帯魚・観賞魚の場合
金魚、メダカなど
小規模な飼育であれば認められやすいですが、大型水槽や高価な熱帯魚は認められにくい傾向があります。
認められにくい理由
- 水槽の維持費(電気代、水道代)がかかる
- 設備費用が高額
- 高価な魚種は資産と見なされる
ペット飼育が認められる判断基準

ケースワーカーの判断ポイント
福祉事務所のケースワーカーが、ペット飼育の可否を判断する際の主なポイントは以下の通りです。
1. 飼育期間
生活保護受給前から長年飼っているペットは、家族同然と見なされ認められやすい。
2. 飼育費用
月々のペット費用が生活保護費の何%を占めるか。目安として月5,000円~10,000円以内が望ましい。
3. 健康状態への影響
ペット飼育により本人の健康や生活に悪影響がないか(例:ペット費用のために食費を削っていないか)。
4. 資産価値
高値で売却できるペットは「処分可能な資産」と見なされる可能性がある。
5. 精神的支え
特に高齢者や障害者、うつ病患者など、ペットが精神的支えとなっている場合は考慮される。
6. 住環境
ペット可の住居か、適切な飼育環境が整っているか。
7. 近隣トラブル
鳴き声、臭い、糞尿などで近隣住民とトラブルになっていないか。
地域による違い
ペット飼育に対する対応は、自治体や担当ケースワーカーによって差があります。
厳格な対応をする自治体
- ペット飼育を原則として認めない方針
- 新規飼育は一切認めない
- 既存のペットも処分を強く指導
柔軟な対応をする自治体
- 適切な飼育であれば容認
- 個別の事情を考慮した判断
- ペットとの共生を支援
この違いは、自治体の財政状況、担当者の裁量、地域の住環境などによって生じます。

医師の診断書が有効なケース
以下のような場合、医師の診断書があると認められやすくなります。
うつ病・不安障害など精神疾患の治療
「ペットとの生活が治療に有効」「ペットが精神的支えとなっている」という医師の診断書。
高齢者の認知症予防
「ペットの世話をすることが認知機能の維持に役立つ」という医師の見解。
障害者の介助
介助犬・聴導犬など、障害者の生活を支援するペット。
これらのケースでは、ペットが「贅沢品」ではなく「生活や治療に必要なもの」と認められる可能性が高まります。

ペット費用の扱い

生活保護費からペット費用は出ない
重要:生活保護費に「ペット費用」という項目はありません。
ペットを飼う場合、その費用はすべて生活扶助の範囲内で自己負担する必要があります。
つまり、自分の食費や衣服費などを節約して、その中からペット費用を捻出することになります。
ペット飼育にかかる費用の目安
小型犬の場合
- 餌代:月3,000円~5,000円
- トイレシート等:月1,000円~2,000円
- 予防接種(年1回):約8,000円
- フィラリア予防薬(年間):約10,000円
- 狂犬病予防接種(年1回):約3,000円
- トリミング(月1回):約5,000円 月平均:約8,000円~12,000円
猫の場合
- 餌代:月2,000円~4,000円
- 猫砂代:月1,000円~2,000円
- 予防接種(年1回):約5,000円 月平均:約3,500円~6,500円
小動物(ハムスター)の場合
- 餌代:月500円~1,000円
- 床材:月500円 月平均:約1,000円~1,500円
医療費が高額になった場合
ペットが病気やケガをして、高額な医療費が必要になった場合、生活保護制度ではその費用は支給されません。
対処法
- ペット保険に加入しておく(保険料は月1,000円~3,000円程度)
- 動物病院の分割払いを相談する
- 動物愛護団体の医療費助成制度を利用する
- 最悪の場合、安楽死も含めて獣医師と相談する
高額医療費が払えないことを理由に、ペットを放置したり虐待したりすることは動物愛護法違反となります。
やむを得ず手放す場合
ペット費用が生活を圧迫し、どうしても飼い続けられない場合の選択肢
1. 里親を探す
- 地域の動物愛護団体に相談
- 里親募集サイトに掲載
- 知人・友人に譲渡
2. 動物愛護センターに相談
自治体の動物愛護センターが、新しい飼い主を探すサポートをしてくれる場合があります。
3. 保護団体に預ける
NPO法人などの動物保護団体が、新しい飼い主が見つかるまで預かってくれることがあります。
絶対にしてはいけないこと
- 遺棄(捨てる):犯罪です(動物愛護法違反、100万円以下の罰金)
- 虐待:犯罪です(同法違反、1年以下の懲役または100万円以下の罰金)
- 保健所での殺処分を安易に選択する
実際のケーススタディ

ケース1:認められた例(高齢者と小型犬)
状況: 75歳女性、一人暮らし。10年間飼っている小型犬(雑種)がいる。生活保護申請時に「犬を手放したくない」と申告。
ケースワーカーの判断
- 長年飼っている家族同然の存在
- 資産価値のない雑種犬
- 月の飼育費用は約5,000円と適正範囲内
- 犬の世話が生活のリズムを作り、精神的支えになっている
- 近隣トラブルなし
結果:飼育継続が認められた
ただし、以下の条件が付けられました。
- 定期的に飼育状況を報告する
- 医療費が高額になった場合は相談する
- 適切な飼育を継続する
ケース2:認められなかった例(多頭飼育)
状況: 50歳女性、猫6匹を飼育。生活保護申請時に全頭の飼育継続を希望。
ケースワーカーの判断
- 6匹の餌代・医療費が月約4万円と高額
- 生活保護費(月約13万円)の約30%をペット費用に充てている
- 本人の食費や光熱費を削っている形跡がある
- 室内が不衛生な状態
結果:頭数を2匹に減らすよう指導
最終的に、残りの4匹は動物愛護団体の協力で里親を見つけ、2匹との生活を継続することとなった。
ケース3:条件付きで認められた例(うつ病患者と猫)
状況: 35歳男性、うつ病で就労不能。保護猫1匹を飼育。主治医から「ペットの存在が治療に有効」という診断書あり。
ケースワーカーの判断
- 医師の診断書があり、医療的に必要性が認められる
- 飼育費用は月約4,000円と適正範囲内
- 室内飼育で近隣トラブルなし
結果:飼育継続が認められた
ただし、以下の条件が付けられました。
- 定期的に主治医の診断書を提出する
- 就労に向けた取り組みを継続する
- 飼育費用が生活を圧迫しないよう管理する
ケース4:購入が認められなかった例
状況: 40歳女性、生活保護受給中。寂しさから子犬を購入したいと相談。
ケースワーカーの判断
- 既に受給中の新規購入は認められない
- 最低限度の生活を維持するための保護費を、ペット購入に使うことは趣旨に反する
- 初期費用(予防接種、去勢手術等)だけで数万円かかる
結果:購入は認められなかった
代替案として、保護猫を譲り受けることを提案されましたが、本人は断念しました。
ペット飼育で指導されないためのポイント

適切な飼育環境を保つ
清潔な環境
- 定期的な掃除
- 臭いや害虫の発生を防ぐ
- ケージや猫トイレの清潔を保つ
適切な健康管理
- 予防接種を受ける
- 病気の早期発見・治療
- 爪切り、歯磨きなどの日常ケア
近隣への配慮
- 鳴き声対策(しつけ、防音)
- 散歩時の糞尿処理
- 共有スペースへの配慮
費用を記録する
ペット費用を家計簿につけることで、適正な範囲内で飼育していることを証明できます。
記録すべき項目
- 餌代
- トイレ用品代
- 医療費
- その他ペット関連費用
ケースワーカーから質問された際に、明確に答えられるようにしておきましょう。
ケースワーカーとコミュニケーションを取る
定期的な報告
- 飼育状況を報告する
- 問題があればすぐに相談する
- 隠し事をしない
誠実な対応
- 指導を受け入れる姿勢を見せる
- 改善が必要な点は改善する
- 約束は守る
万が一に備える
緊急時の預け先を確保
- 入院時に預かってくれる人を見つけておく
- ペットホテルの情報を調べておく
ペット保険の検討
可能であれば、月1,000円程度のペット保険に加入しておくと安心です。
よくある質問(FAQ)

Q1:生活保護を受けながら新しくペットを飼うことはできますか?
A:原則として認められません。生活保護費は「健康で文化的な最低限度の生活」を維持するためのものであり、新たにペットを購入・飼育することは最低限度の生活を超えた贅沢と見なされます。ただし、野良猫を保護した場合など、特殊な事情がある場合は個別に相談してください。
Q2:既に飼っているペットを手放すよう言われましたが、従わなければいけませんか?
A:ケースワーカーの「指導」には従う努力義務がありますが、法的な強制力はありません。ただし、指導に正当な理由なく従わない場合、生活保護が停止・廃止される可能性があります。まずはケースワーカーとよく話し合い、妥協点を見つけることが重要です。医師の診断書など、ペット飼育の必要性を示す証拠があれば提出しましょう。

Q3:ペットが病気になり、高額な医療費がかかる場合はどうすればいいですか?
A:生活保護からペットの医療費は支給されません。以下の対処法を検討してください。
- ペット保険に加入している場合は保険を利用
- 動物病院に分割払いを相談
- 動物愛護団体の医療費助成制度を利用
- やむを得ない場合は、新しい飼い主を探すことも検討 高額医療費が払えないことを事前にケースワーカーに相談することをおすすめします。
Q4:ペット可の賃貸物件に引っ越したいのですが、可能ですか?
A:住宅扶助の範囲内(地域ごとに上限額が設定されている)で、ペット可の物件が見つかれば可能です。ただし、ペット可物件は家賃が高めのことが多く、住宅扶助の上限を超える場合は認められません。また、「ペットのため」という理由だけでは引越しが認められない場合もあります。

Q5:犬の登録料や狂犬病予防接種の費用は生活保護から出ますか?
A:出ません。犬の登録料(約3,000円)と狂犬病予防接種費用(約3,000円)は、飼い主の義務として生活保護費の中から自己負担する必要があります。これらは法律で義務付けられているため、必ず行ってください。
Q6:ペットの里親募集サイトで譲り受けることは可能ですか?
A:ケースワーカーに事前に相談してください。無料または低額で譲り受ける場合で、資産価値がない一般的なペットであれば、認められる可能性があります。ただし、生活保護受給中の新規飼育は原則として推奨されていないため、慎重に判断されます。
Q7:ペットがいることを福祉事務所に隠していましたが、バレるとどうなりますか?
A:虚偽申告または必要事項の不申告として、以下のような処分を受ける可能性があります:
- 生活保護の停止・廃止
- 返還命令(不正受給があった場合)
- 刑事告発(悪質な場合) ペットを飼っていることは必ず申告してください。隠すことでより大きな問題になります。
Q8:高齢のペットの介護費用が増えてきました。どうすればいいですか?
A:まずケースワーカーに状況を相談してください。高齢ペットの介護費用が生活を圧迫する場合、以下の選択肢を検討することになるかもしれません:
- 動物愛護団体のシニアペット支援制度を利用
- 可能な範囲でのケアに限定(延命治療は行わないなど)
- 新しい飼い主を探す(難しいが)
- 最期まで看取る覚悟で、他の支出を削減 ペットの高齢化は避けられない問題です。早めに将来の計画を立てておきましょう。
まとめ:ペットとの共生は可能だが条件がある

重要ポイントの再確認
法律上、ペット飼育は禁止されていませんが、飼育費用を生活保護費の範囲内で賄い、最低限度の生活を維持できることが前提です。
既に飼っているペットは認められやすいですが、多頭飼育や高額なペットは処分を指導される可能性があります。
受給中の新規飼育は原則として認められません。ペットは「最低限度の生活」に必要なものとは見なされないためです。
ペット費用は生活保護費から支給されません。すべて生活扶助の範囲内で自己負担する必要があります。
ケースワーカーとのコミュニケーションが重要です。ペット飼育について隠さず、誠実に相談することで、理解を得られる可能性が高まります。
最後に
ペットは家族の一員であり、精神的な支えとなる存在です。生活保護を受けながらでも、適切な飼育と費用管理を行えば、ペットとの生活を続けることは可能です。
ペット飼育について不安や疑問がある場合は、担当ケースワーカーに早めに相談してください。また、動物愛護団体や地域の獣医師なども相談先となります。ペットも自分も幸せに暮らせるよう、計画的な飼育を心がけましょう。


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