生活保護を受給している方にとって、「健康診断は受けられるのか」「費用は自己負担なのか」「どんな検診が対象なのか」は重要な関心事です。
健康を維持することは、生活の質を保ち、将来的な自立にもつながる大切なことです。
本記事では、生活保護受給者の健康診断について、受診できる検診の種類、費用負担、医療扶助の範囲、手続き方法、そして注意点まで、具体例を交えて詳しく解説します。
生活保護受給者の健康診断の基本

健康診断は受けられるのか
結論:自治体の実施する健康診断は無料で受けられます。
生活保護受給者は、以下の健康診断・検診を無料で受けることができます。
1. 特定健康診査(特定健診)
- 40歳~74歳が対象
- メタボリックシンドローム予防のための検診
- 自治体が実施
2. 後期高齢者健康診査
- 75歳以上が対象
- 自治体が実施
3. がん検診
- 胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がん等
- 自治体が実施する検診
4. 結核健康診断
- 65歳以上が対象(自治体により異なる)
- 法律で定められた検診
5. 妊婦健康診査
- 妊娠中の女性が対象
- 母子保健法に基づく検診
医療扶助の対象外となる健康診断
以下の健康診断は、原則として医療扶助の対象外です。
1. 人間ドック
- 任意の精密検査
- 高額(数万円~十数万円)
- 医学的必要性が認められにくい
2. 職場の定期健康診断
- 労働安全衛生法に基づく検診
- 雇用主が費用負担する義務
3. 自費での健康診断
- 特定の病気の早期発見を目的とした任意検診
- 美容・アンチエイジング目的の検査
ただし例外がある 医師が医学的に必要と判断し、診療の一環として行われる検査は、医療扶助の対象となります。

自治体健康診断の受け方

特定健康診査(特定健診)
対象者 40歳~74歳の生活保護受給者
検査項目
- 身長・体重・BMI
- 腹囲測定
- 血圧測定
- 血液検査(脂質、血糖、肝機能等)
- 尿検査
受診方法
- 受診券の入手
- 自治体から郵送される
- 届かない場合は福祉事務所または保健センターに問い合わせ
- 実施医療機関の確認
- 受診券に記載されている医療機関リスト
- 自治体のホームページで確認
- 予約
- 医療機関に電話で予約
- 「特定健診を受けたい」と伝える
- 受診
- 受診券と被保険者証(生活保護受給者は不要な場合も)を持参
- 費用は無料
- 結果の受け取り
- 後日、自宅に郵送または医療機関で説明
受診期間 通常、4月~翌年3月(自治体により異なる)
がん検診
主ながん検診の種類
胃がん検診
- 対象:50歳以上(40歳以上の自治体もあり)
- 方法:胃X線検査または胃内視鏡検査
- 頻度:2年に1回(胃X線は年1回の場合も)
肺がん検診
- 対象:40歳以上
- 方法:胸部X線検査、必要に応じて喀痰検査
- 頻度:年1回
大腸がん検診
- 対象:40歳以上
- 方法:便潜血検査
- 頻度:年1回
子宮頸がん検診
- 対象:20歳以上の女性
- 方法:細胞診
- 頻度:2年に1回
乳がん検診
- 対象:40歳以上の女性
- 方法:マンモグラフィ
- 頻度:2年に1回
受診方法
- 案内の確認
- 自治体から検診案内が郵送される
- 広報誌やホームページで確認
- 申し込み
- 保健センターに電話または窓口で申し込み
- 集団検診または個別検診を選択
- 受診
- 指定日時・場所で受診
- 費用は無料(生活保護受給者)
- 結果通知
- 自宅に郵送
- 要精密検査の場合は医療機関受診
後期高齢者健康診査
対象者 75歳以上の生活保護受給者
検査項目 特定健診とほぼ同様
受診方法 特定健診と同じ流れ
医療扶助による健康診断

診療の一環としての検査
医師の判断により医療扶助の対象 以下のような場合、健康診断的な検査も医療扶助でカバーされます。
1. 症状がある場合
- 体調不良で受診し、原因究明のための検査
- 例:胸痛→心電図、胸部X線等
2. 経過観察が必要な場合
- 既往症の定期チェック
- 例:高血圧→定期的な血液検査
3. 治療の一環
- 薬の効果や副作用の確認
- 例:糖尿病治療→血糖値測定
4. 予防的検査(医師が必要と判断)
- 家族歴や症状から早期発見が重要
- 例:がん家族歴→定期的な画像検査

手続き方法
医療券の取得
- 福祉事務所に連絡
- 受診したい医療機関名
- 検査の必要性
- 医療券の発行
- 福祉事務所が医療券を発行
- 医療機関受診
- 医療券を提示
- 医師の判断で必要な検査を実施
- 費用負担
- 医療扶助により無料
注意点 「健康診断を受けたい」という理由だけでは医療券が発行されないことがあります。症状や医学的必要性を説明することが重要です。


職場の健康診断

雇用主の義務
労働安全衛生法による定期健康診断 雇用主は、従業員に年1回の健康診断を実施する義務があります。
対象者
- 正社員
- 週の労働時間が正社員の3/4以上のパート・アルバイト
費用負担 雇用主が全額負担
生活保護受給者の場合 働いている場合、職場の健康診断を無料で受けられます。生活保護とは別の制度です。
受診義務
従業員の義務 労働安全衛生法では、従業員も健康診断を受ける義務があります。
拒否した場合
- 法律違反(罰則はない)
- 就業規則違反となる可能性
- 雇用主・従業員双方の責任
生活保護受給者の対応 働いている場合、必ず職場の健康診断を受けましょう。健康管理は就労継続の基本です。

健康診断の結果と対応

異常が見つかった場合
要精密検査・要治療の通知 健康診断で異常が見つかった場合、医療機関を受診します。
医療扶助の対象
- 精密検査
- 治療
- 薬代
すべて医療扶助でカバーされ、自己負担はありません。

手続き
- 福祉事務所に連絡
- 健康診断の結果を報告
- 精密検査・治療の必要性を説明
- 医療券の取得
- 医療機関受診
- 治療開始
放置しない 異常を放置すると、病気が進行し、より重篤な状態になります。早期発見・早期治療が重要です。
健康診断結果の保管
記録を保管 健康診断の結果は、大切に保管しましょう。
活用方法
- 医療機関受診時に提示
- 経年変化の確認
- ケースワーカーへの報告
紛失した場合 実施機関に再発行を依頼できる場合があります。

健康管理のアドバイス

定期的な受診の重要性
健康は自立の基盤 健康を維持することは、就労や社会参加の基盤です。
予防が最も経済的 病気になってから治療するより、予防の方が負担が少なく、生活の質も保てます。
推奨される健康管理
- 年1回の健康診断
- 異常があれば速やかに受診
- 生活習慣の改善(食事、運動、禁煙等)
生活習慣病の予防
生活保護受給者に多い疾患
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 肥満
予防のポイント
1. バランスの良い食事
- 野菜を多く摂る
- 塩分を控える
- 適量の炭水化物
2. 適度な運動
- ウォーキング
- 体操
- 地域の運動教室への参加
3. 禁煙
- タバコは百害あって一利なし
- 禁煙外来の利用(医療扶助の対象)

4. 適正飲酒
- 過度の飲酒を避ける
- 週2日は休肝日

健康相談の活用
保健センター
- 栄養相談
- 健康相談
- 運動指導
地域包括支援センター(高齢者)
- 介護予防
- 健康づくり
ケースワーカー
- 健康面での困りごとを相談
- 必要な支援の紹介
健康診断に関する注意点

1. 受診忘れに注意
案内が届いたら早めに予約 健康診断の案内が届いたら、忘れないうちに予約しましょう。
スケジュール管理
- カレンダーに記入
- リマインダーを設定
2. 正直な申告
既往歴や症状を正直に 健康診断や医療機関受診時、既往歴や症状を正直に伝えましょう。
服薬中の薬も報告 現在服用している薬があれば、必ず伝えてください。
3. 二重受診を避ける
重複検査の無駄 同じ検査を複数回受けることは、医療資源の無駄です。
記録の共有
- お薬手帳を活用
- 健康診断結果を医療機関に提示
4. 結果を放置しない
異常があれば速やかに受診 「要精密検査」「要治療」の結果が出たら、放置せず医療機関を受診してください。
よくある質問

Q: 人間ドックは受けられますか?
A: 原則として医療扶助の対象外です。ただし、自治体の実施する健康診断(特定健診、がん検診等)を組み合わせることで、基本的な健康チェックは可能です。
Q: 会社の健康診断を受けたら、特定健診は受けなくても良いですか?
A: 会社の健康診断が特定健診の項目を満たしていれば、二重に受ける必要はありません。結果を自治体に提出することで、特定健診を受けたことになります。
Q: 健康診断を受けないとどうなりますか?
A: 法的な罰則はありませんが、病気の早期発見ができず、健康を損なうリスクが高まります。特に、職場の健康診断は受診義務があります。
Q: 自費で人間ドックを受けたいのですが?
A: 生活扶助費の範囲内であれば、自費で受けることも可能です。ただし、数万円の出費は生活を圧迫する可能性が高く、推奨されません。
Q: 検診で異常が見つかったら、保護費が減りますか?
A: いいえ。病気が見つかっても保護費が減ることはありません。むしろ、医療扶助により治療を受けられます。

Q: 歯科検診も無料ですか?
A: 自治体によっては、歯科検診を実施しているところもあります。また、症状があれば歯科医院を受診し、医療扶助で治療を受けられます。
Q: 眼科検診は受けられますか?
A: 視力検査単独の検診は通常ありませんが、症状があれば眼科を受診し、医療扶助で検査・治療を受けられます。
まとめ

生活保護受給者の健康診断について、重要なポイントをまとめます。
受けられる健康診断
- 特定健康診査(40~74歳):無料
- 後期高齢者健康診査(75歳以上):無料
- がん検診(胃、肺、大腸、子宮頸、乳):無料
- 結核健診(65歳以上):無料
- 妊婦健診:無料
- 職場の健康診断(就労者):雇用主負担で無料
受けられない健康診断
- 人間ドック:原則対象外
- 自費での任意検診:原則対象外
受診方法
- 自治体から案内・受診券を受け取る
- 実施医療機関に予約
- 受診券を持参して受診
- 費用は無料
異常が見つかった場合
- 福祉事務所に連絡
- 医療券を取得
- 医療機関で精密検査・治療
- 医療扶助により無料
健康管理のポイント
- 年1回は健康診断を受ける
- 生活習慣病を予防(食事、運動、禁煙)
- 異常があれば速やかに受診
- 保健センター等の健康相談を活用
健康は何よりも大切な財産です。生活保護を受けていても、無料で健康診断を受けられる制度がありますので、積極的に活用し、健康を維持しましょう。健康であることが、将来的な自立への第一歩です。


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