生活保護を利用する際、福祉事務所が行う調査のひとつに 「病状調査」 があります。
病状調査は 生活保護法28条 を根拠とし、申請者・受給者の健康状態を把握し、「働くことが可能か」「他の制度を利用すべきか」などを判断するために実施されます。
生活保護は“健康で働ける人は働き、自立に向かうこと”を前提とする制度であるため、病状調査は適切な支援につなげるための重要なプロセスです。
この記事では、
・病状調査が行われる理由
・調査内容
・検診命令とは何か
・従わなかった場合のペナルティ
・調査後の指導内容
・例外的に就労指導が猶予されるケース
などを、専門的かつ分かりやすく解説します。
病状調査の目的とは?生活保護法28条に基づく重要な手続き
生活保護法28条では、福祉事務所は「申請者の健康状態・能力を調査する権限」を持つとされています。
生活保護開始時に一度調査されますが、受給中であっても 必要があればいつでも調査が行われます。
稼働能力の判断(働けるかどうかの確認)
特に重要となるのが、18歳以上65歳未満の「稼動年齢層」の就労可能性の判断」です。
この年齢層は「健康であれば働く努力をする」という義務があります。
そのため福祉事務所は、医師の判断をもとに、
・働ける状態なのか
・配慮すべき病気や障害があるのか
・どの程度の就労が可能か(フルタイム、短時間など)
を確認します。
他法他施策に該当するかの確認
病状によっては以下の制度が利用できる場合があります。
・自立支援医療
・障害者手帳
・障害基礎年金・障害厚生年金
・精神障害者保健福祉手帳
・難病制度 など
これらを利用できると、生活保護費の負担が減り、より適切な医療・支援を受けることができます。
医師の診断によって「他の制度を優先すべきか」を判断するため、病状調査は欠かせません。
体調に問題がなければ病状調査は行わない
申請者が明らかに健康であり、医療機関の受診歴もない場合には、福祉事務所が病状調査を実施しないこともあります。
無駄な負担を与えないための配慮です。
病状調査の内容とは?どのように進められるのか

病状調査は、主に 医療機関を通じて実施 されます。
通院している医療機関への照会
すでに指定医療機関に通院している場合、福祉事務所はその病院に対し、以下の内容を照会します。
・現在の診断名
・症状の程度
・治療状況
・就労の可否
・他法他施策の対象になるか
・日常生活で支障があるか
医師の回答は「生活保護の指導内容」を決定する重要な情報となります。
通院していない場合は「検診命令」が出ることもある
現在医療機関にかかっていない申請者には、福祉事務所から「この日のこの時間に、○○病院を受診してください」という 検診命令 が出ることがあります。
これは法律に基づいた正式な命令です。
検診命令に従わないとどうなる?
検診命令に従わない場合、重大なペナルティがあります。
・生活保護の却下
・生活保護の停止
・生活保護の廃止
などの措置が取られる可能性があります。

病状調査は「生活保護を適切に給付するため」に必要な手続きですので、指示があれば必ず従うようにしましょう。
病状調査の結果から行われる指導内容

病状調査の結果に応じて、福祉事務所から指導が行われます。
就労可能と判断された場合:就労指導が行われる
医師の診断で「就労可能」と判断された場合、受給者は 就労活動を行う義務があります。
この場合、
「今まで働いたことがないから無理」
「年齢的に難しい」
「なんとなく体調が悪くて働けない」
といった理由は認められません。
診断上問題がなければ、必ず就労活動を開始する必要があります。


他の制度が利用できる場合:手続きが必要
自立支援医療や障害者手帳、障害年金など、他法他施策が利用できると医師が判断した場合、福祉事務所から手続きの案内があります。

生活保護は「他の制度が使えない場合に最後に使う制度」であるため、該当する制度があるなら必ず申請しなければなりません。
例外的に就労指導が猶予されるケース

医師が「就労可能」と判断していても、以下のような特別な事情がある場合は、就労指導をすぐに行わないことがあります。
例:母子家庭・父子家庭で保育園の確保が必要な場合
子どもを預ける場所が確保できていなければ働きたくても働けません。
そのため、
・保育園の空き待ち
・入園案内中
・預け先が決まり次第、働く予定
といった状況では、就労指導が猶予されることがあります。
福祉事務所は家庭環境を総合的に判断して柔軟に対応するため、心配する必要はありません。

まとめ:病状調査は適切な支援のために必要な手続き

病状調査は「働けるかどうか」「支援が必要な状態か」を客観的に判断するために行われます。
病状調査で分かること
・就労可能かどうか
・他制度を利用すべきか
・医療的な配慮が必要か
・生活保護で必要な支援の内容
注意点
・検診命令に従わないと「却下・停止・廃止」の可能性
・就労可能なら就労指導に従う必要がある
・特別な事情があれば柔軟に配慮される
病状調査は「生活保護の打ち切りを狙ったもの」ではありません。

むしろ、あなたが 無理なく生活し、自立に向かうための重要なステップです。
不安なことがあれば、担当ケースワーカーに相談しながら進めれば問題ありません。
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