生活保護を申請すると、多くの方が気にするのが「親族に連絡がいくのか?」という点です。
実際、生活保護制度では一定の親族に対して『扶養義務調査』が行われる仕組みがあります。
まずは、その根拠となる法律から確認していきましょう。
民法第877条には、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」と定められています。
さらに生活保護法第4条第2項では、「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」
と規定されています。
これらを根拠として、生活保護の申請があると、自治体は親族に対して扶養の意思があるかどうかを確認する「扶養義務調査」を行います。
扶養義務調査の目的
扶養義務調査は、親族が以下のような援助を行えるかどうかを確認するために実施されます。
- 経済的援助(仕送り・生活費・食料)
- 精神的援助(見守りや保証人になること)

ここで重要なのは次の点です。
扶養義務がある=生活保護が受けられない、という意味ではありません。
多くの場合、親族が援助できないと回答すれば、生活保護の可否には影響しません。
しかし注意点もあります。
親族が「援助できる」と回答しているのに、申請者がそれを断っている場合、「活用できる資産を活用していない」と見なされ、生活保護が受けられなくなる可能性があります。

扶養義務調査の対象となる親族

扶養義務者は、法律上「絶対的扶養義務者」と「相対的扶養義務者」に分類されます。
絶対的扶養義務者(必ず調査が行く)
- 祖父母
- 父母
- 兄弟姉妹
- 子・孫
絶対的扶養義務者には必ず調査が行われます。
相対的扶養義務者(調査が行く場合がある)
- 叔父・叔母
- 甥・姪
状況に応じて調査が行われることがあります。
また、これまで申請者に対して何かしらの援助をしていた人がいれば、その人に対しても調査が行われることがあります。
世帯全員について親族が確認される
扶養義務調査は、世帯員全員について親族関係が確認されます。
そのため、申請者自身にとって親族でなくても、世帯員の親族であれば調査対象になります。
例:母子家庭の場合
母にとって元夫は親族ではない(調査対象外)
→ しかし子にとって元夫は父であるため、調査対象になる
結果:元夫に扶養(養育)義務調査が行われる
扶養義務調査が行われないケース

以下のように、明らかに扶養が望めない場合は調査が省略されます。
- 親族が未成年で扶養能力がない場合
- DV(家庭内暴力)から逃れている場合
このようなケースでは、自治体は安全を最優先し、調査を行いません。
ただし、DVを理由に調査を止めたい場合には
- 警察や相談窓口への相談実績
- 戸籍の閲覧制限(戸籍ブロック)の申請
など、一定の対応が必要です。
余談ですが、DVから避難する場合は、生活保護の有無にかかわらず、戸籍ブロックを行うことを強くおすすめします。
親族への通知を避けたい場合は相談を

家庭の事情により、特定の親族には知られたくない場合もあります。
その際は、担当ケースワーカーに事情を説明し、配慮を依頼しましょう。

自治体は、本人の安全や生活再建を最優先に考え、できる限りの対応を行ってくれます。
まとめ|扶養義務調査はあくまで制度上の確認

- 扶養義務調査は法律に基づく通常の手続き
- 調査が行われても、生活保護の可否とは直接関係しない
- 親族が援助できなくても生活保護の受給は可能
- DVなど特別な事情がある場合は調査が省略される
扶養義務調査は「生活保護を利用しにくくするための仕組み」ではなく、あくまで制度上必要な確認です。
不安な場合は、申請時にケースワーカーへ相談することで、適切に配慮してもらえます。

