「生活保護を受けているが特養に入れる?」「費用はどうなる?」「自己負担はある?」生活保護受給者やその家族が、特別養護老人ホーム(特養)への入所を検討する際、こうした疑問や不安を抱くことは少なくありません。
結論から言えば、生活保護受給者でも特養に入所できます。
特養の費用は、介護扶助として生活保護から支給されるため、受給者の自己負担はほぼゼロです。厚生労働省の統計によれば、特養入所者の約10~15%が生活保護受給者であり、経済的困窮者の受け皿として重要な役割を果たしています。
本記事では、生活保護受給者の特養入所の条件、費用の仕組み、入所手続き、さらには入所後の生活保護費の扱いまで、介護保険法と生活保護法に基づいて徹底解説します。
この記事でわかること
- 生活保護受給者の特養入所条件
- 特養にかかる費用と介護扶助の仕組み
- 自己負担額と生活保護での対応
- 特養入所の手続き(5ステップ)
- 入所後の生活保護費の扱い
- 特養入所に関するよくある質問
生活保護受給者でも特養に入所できる

特別養護老人ホーム(特養)とは
定義 要介護度3以上の高齢者が入所できる、公的な介護施設です。
正式名称 介護老人福祉施設
運営主体 社会福祉法人、地方自治体など
特徴
- 比較的安価な施設
- 終身利用が可能
- 要介護度が高い方が優先
生活保護受給者の入所可否
入所可能 生活保護を受けていても、特養に入所できます。
法的根拠
- 介護保険法:要介護認定を受けた方は、介護サービスを受ける権利がある
- 生活保護法第15条の2:介護扶助により、介護サービスの費用が支給される
実態 厚生労働省の調査では、特養入所者の約10~15%が生活保護受給者です。
入所のメリット
費用負担が軽い 生活保護の介護扶助により、費用のほぼ全額が支給されます。

終身利用可能 特養は、原則として終身利用できます。
安心の介護 24時間体制で介護を受けられます。
特養入所の条件

特養に入所するには、以下の条件を満たす必要があります。
条件1:年齢
原則:65歳以上 介護保険の第1号被保険者(65歳以上)が対象です。
例外:40歳以上65歳未満 特定疾病(がん末期、関節リウマチなど)により要介護認定を受けた場合、入所できることがあります。
条件2:要介護度
原則:要介護3以上 2015年の制度改正により、原則として要介護3以上の方が対象となりました。
要介護度とは
- 要介護1~2:軽度~中等度
- 要介護3~5:重度
例外:要介護1~2でも入所できるケース
- 認知症で日常生活に支障がある
- 知的障害・精神障害等で日常生活に支障がある
- 家族等による虐待がある
- 単身世帯で地域での介護サービスが不十分
条件3:入所の必要性
在宅での介護が困難 在宅での生活が困難で、施設でのケアが必要と認められる場合。
審査 各施設の入所判定委員会が、入所の必要性を審査します。
優先順位
- 要介護度が高い
- 介護者がいない(単身、または家族の介護力が低い)
- 在宅サービスの利用状況
これらを総合的に評価し、優先順位が決定されます。
生活保護受給者の優先度
必ずしも優先されない 生活保護を受けていることが、直接的に優先順位を上げるわけではありません。
ただし、生活保護受給者は、経済的理由により他の施設(有料老人ホームなど)に入所できないことが多いため、結果的に特養への入所が優先されることがあります。
特養にかかる費用と介護扶助
特養の費用は、どのように支払われるのでしょうか。
特養の費用の内訳
1. 施設サービス費(介護サービス費) 介護サービスそのものの費用。
自己負担割合
- 原則:1割
- 一定以上所得者:2割または3割
2. 居住費 部屋代。
3. 食費 食事代。
4. 日常生活費 理美容代、娯楽費など。
生活保護受給者の費用負担
介護扶助 生活保護の介護扶助により、以下の費用が支給されます。
支給される費用
- 施設サービス費の自己負担分(1割)
- 居住費
- 食費
支給されない費用
- 日常生活費(理美容代、娯楽費など)
これらは、生活保護の生活扶助から支払います。

費用の具体例
特養(従来型個室)、要介護3、生活保護受給者の場合
月額費用(目安)
- 施設サービス費(1割自己負担):約2万5,000円
- 居住費:約5万円
- 食費:約4万円
- 合計:約11万5,000円
生活保護からの支給
- 介護扶助:約11万5,000円(施設サービス費+居住費+食費)
- 生活扶助:約2万円(日常生活費、小遣いなど)
- 合計:約13万5,000円
受給者の自己負担 ほぼゼロ(日常生活費を生活扶助から支払う)
補足給付(特定入所者介護サービス費)
低所得者への減額制度 介護保険には、低所得者の居住費・食費を減額する「補足給付」制度があります。
生活保護受給者の場合 補足給付の第1段階(最も減額される)に該当します。
減額後の負担額
- 居住費:約1万円~3万円(部屋のタイプによる)
- 食費:約1万円
実際の費用 補足給付により、居住費・食費が大幅に減額され、月額総費用は約7万円~9万円程度になります。
特養入所の手続き

特養に入所するための手続きを、5つのステップで説明します。
ステップ1:要介護認定の取得
前提条件 特養に入所するには、要介護認定(原則、要介護3以上)が必要です。
手続き
- 市区町村の介護保険課に申請
- 訪問調査
- 主治医意見書の提出
- 審査・判定
- 認定結果の通知
所要期間 通常、申請から約1か月。
生活保護受給者の場合 ケースワーカーが手続きを支援してくれます。

ステップ2:施設の選定
情報収集
- 市区町村の介護保険課で情報提供
- ケアマネージャーに相談
- インターネットで検索
選定のポイント
- 自宅からの距離
- 施設の雰囲気
- 生活保護受給者の受け入れ実績
生活保護受給者の場合 ケースワーカーに、生活保護受給者を受け入れている施設を紹介してもらいます。
ステップ3:施設への申込み
必要書類
- 入所申込書
- 要介護認定書のコピー
- 健康診断書
- 所得証明書(生活保護受給証明書)
申込み方法 施設に直接申込みます。複数の施設に申し込むことができます。
ステップ4:入所判定
入所判定委員会 施設の入所判定委員会が、以下を総合的に評価します。
評価項目
- 要介護度
- 介護者の有無
- 在宅サービスの利用状況
- その他の事情
優先順位の決定 評価に基づき、入所の優先順位が決定されます。
待機期間 特養は人気が高く、入所まで数か月~数年待つことがあります。
ステップ5:入所契約
入所の連絡 施設から、入所可能の連絡が来ます。
契約 施設と入所契約を結びます。
費用の確認 介護扶助の適用、補足給付の適用を確認します。
生活保護受給者の場合 ケースワーカーが契約に同席し、費用の支払いについて施設と調整します。
入所後の生活保護費の扱い

特養に入所した後、生活保護費はどうなるのでしょうか。
介護扶助の支給
施設への直接支払い 介護扶助(施設サービス費、居住費、食費)は、福祉事務所から施設に直接支払われます(代理納付)。

受給者の手元には来ない 介護扶助は、受給者の手元には来ません。
生活扶助の減額
在宅時より減額 特養に入所すると、生活扶助が減額されます。
理由 施設で居住費・食費が提供されるため、在宅時のような生活費が不要になるため。
減額後の生活扶助 月約2万円~3万円程度(日常生活費、小遣いなど)
使途
- 理美容代
- 娯楽費
- 日用品費
- その他の個人的な支出
住宅扶助の停止
住宅扶助は支給されない 特養に入所すると、住宅扶助(家賃)は支給されなくなります。

自宅の処分 入所前に住んでいたアパートは、原則として解約します。
例外 一時的な入所(リハビリ目的など)で、退所の見込みがある場合、住宅扶助が継続されることがあります。
医療扶助は継続
医療扶助は継続 特養入所中も、医療が必要な場合、医療扶助が継続されます。

費用 医療費は、医療扶助により無料です。

特養以外の選択肢

特養への入所が困難な場合、他の選択肢もあります。
1. 介護老人保健施設(老健)
特徴 リハビリを目的とした施設。原則、3か月程度の入所。
対象 要介護1以上
費用 特養とほぼ同程度。生活保護の介護扶助が適用されます。

2. 介護医療院
特徴 医療的ケアが必要な方のための長期療養施設。
対象 要介護1以上で、医療的ケアが必要な方
費用 生活保護の介護扶助と医療扶助が適用されます。
3. グループホーム
特徴 認知症の方が少人数で共同生活する施設。
対象 要支援2または要介護1以上で、認知症の方
費用 特養より高額ですが、生活保護の介護扶助が適用される場合があります。ケースワーカーに相談してください。

4. 有料老人ホーム
特徴 民間企業が運営する施設。
費用 高額なため、生活保護受給者には通常、適さない。ただし、低価格の施設もあります。
5. 在宅介護サービス
特徴 自宅で生活しながら、訪問介護、デイサービスなどを利用。
費用 介護扶助が適用されます。
よくある質問(Q&A)

Q1: 生活保護を受けていると、特養に入りにくいですか?
A: いいえ、生活保護を受けていることが、入所の障害になることはありません。入所の優先順位は、要介護度、介護者の有無、在宅サービスの利用状況などで決まります。ただし、施設によっては、生活保護受給者の受け入れ枠が限られている場合があります。
Q2: 特養の費用は全額無料ですか?
A: ほぼ無料です。施設サービス費、居住費、食費は介護扶助で支給されます。ただし、理美容代、娯楽費などの日常生活費は、生活扶助から支払います。
Q3: 特養に入所すると、生活保護費はどうなりますか?
A: 介護扶助(施設費用)は福祉事務所から施設に直接支払われ、手元には来ません。生活扶助は月約2万円~3万円程度に減額され、日常生活費として支給されます。住宅扶助は停止されます。
Q4: 要介護2ですが、特養に入れますか?
A: 原則として、要介護3以上が条件ですが、認知症で日常生活に支障がある、虐待がある、単身世帯で在宅サービスが不十分などの特別な事情がある場合、入所できることがあります。ケアマネージャーやケースワーカーに相談してください。
Q5: 特養の待機期間はどれくらいですか?
A: 地域や施設により異なりますが、数か月~数年かかることがあります。特に人気の高い施設は、待機が長くなります。複数の施設に申し込むことをお勧めします。
Q6: 特養に入所したら、自宅のアパートはどうなりますか?
A: 原則として、入所前に解約します。住宅扶助が停止されるため、家賃が払えなくなるためです。ただし、一時的な入所で退所の見込みがある場合、住宅扶助が継続されることがあります。
Q7: 特養に入所しても、医療費は無料ですか?
A: はい、医療扶助が継続されるため、医療費は無料です。
Q8: 生活保護を受け入れてくれる特養はどうやって探しますか?
A: ケースワーカーに相談してください。生活保護受給者を受け入れている施設を紹介してもらえます。また、市区町村の介護保険課でも情報提供を受けられます。

まとめ:生活保護でも特養に入所できる—費用はほぼ無料
本記事の重要なポイントをまとめます。
入所可否 生活保護受給者でも特養に入所できる
入所条件
- 年齢:原則65歳以上
- 要介護度:原則、要介護3以上
- 入所の必要性:在宅介護が困難
費用
- 施設サービス費:介護扶助で支給
- 居住費:介護扶助で支給(補足給付で減額)
- 食費:介護扶助で支給(補足給付で減額)
- 日常生活費:生活扶助から支払い
- 自己負担:ほぼゼロ
手続き(5ステップ)
- 要介護認定の取得
- 施設の選定
- 施設への申込み
- 入所判定
- 入所契約
入所後の生活保護費
- 介護扶助:施設に直接支払い
- 生活扶助:月約2万円~3万円(日常生活費)
- 住宅扶助:停止
- 医療扶助:継続
特養以外の選択肢
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護医療院
- グループホーム
- 有料老人ホーム
- 在宅介護サービス
最後に
生活保護を受けていても、特養に入所することは可能です。費用は介護扶助で賄われ、受給者の自己負担はほぼゼロです。
ただし、特養は人気が高く、入所まで待機期間があることが多いため、早めに申込みをすることが重要です。また、施設により生活保護受給者の受け入れ枠が限られている場合があるため、ケースワーカーに相談し、受け入れ実績のある施設を紹介してもらいましょう。
高齢で介護が必要になった場合、一人で悩まず、ケースワーカーやケアマネージャーに相談してください。適切な施設やサービスを紹介してもらえます。

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