生活保護を申請するときや受給中に、多くの方が不安に感じるのが「保険を調査されるのか?」という点だと思います。
結論から言うと、福祉事務所は生活保護法29条を根拠に、申請者が加入している保険について調査する権限を持っています。
調査は生活保護開始時に行われるだけでなく、受給期間中であればいつでも実施される可能性があります。
また、対象となるのは申請者本人だけではありません。同一世帯の家族も調査の対象に含まれます。

本記事では、保険調査が行われる理由や、貯蓄型保険の扱い、調査内容、注意点などをわかりやすく解説します。
生活保護の保険調査はなぜ行われるのか?【調査の目的】
福祉事務所が保険を調査する目的は、現在加入している保険の内容を正確に把握するためです。
貯蓄型保険は「預貯金」と同じ扱い
生命保険・学資保険などの貯蓄型保険には、解約時にお金が戻る「解約返戻金」があります。
この返戻金は、生活保護制度上預貯金と同じ資産として扱われます。

そのため、保険を解約した場合に受け取れる返戻金が、次のいずれかに該当すると生活保護に影響します。
- 最低生活費以上 → 生活保護は受けられない
- 最低生活費の半分以上 → 初回支給額が減額される
なお、生活保護の申請をする以上は、いかなる理由があろうと保険は解約になります。
「学資保険だから見逃してほしい。」「今解約すると支払い金額よりも受取金額が下がって損をしてしまうから困る。」等を理由に保険の解約を拒否する方がいらっしゃいますが、その場合は生活保護を受けられなくなりますのでご注意ください。
返戻金が最低生活費以上なら申請却下
例:最低生活費10万円、解約返戻金50万円の場合
最低生活費10万円 < 解約返戻金50万円のため、申請しても却下となります。
返戻金が最低生活費未満でも減額される場合がある
例:最低生活費10万円、返戻金8万円の場合
- 最低生活費の半分=5万円
- 返戻金8万円 → 半分(5万円)を超える3万円
- 初回支給額が3万円減額
このように、生活保護では保険の返戻金が非常に重要な判断材料となるため、福祉事務所は必ず保険調査を行います。
生活保護の保険調査で分かること【調査の内容】

生活保護の保険調査では、現在加入中の保険契約だけではなく、直近まで加入していた保険についても確認されます。
調査で分かる主な内容
- 加入中の保険会社・商品名・契約内容
- 過去に加入していた保険があるかどうか
- 保険金・給付金が支払われた記録
- 解約返戻金の金額
- 保険料の支払状況
なぜここまで詳しく分かるのか?
生活保護法29条により、福祉事務所は保険会社に対して正式に情報提供を求めることができるからです。
そのため、本人が保険加入を隠しても、後の調査で必ず発覚します。
保険金の受取りも必ず把握される
保険会社から給付金・慰謝料・入院給付金などが支払われた場合、福祉事務所はその内容を確認できます。
受給中に保険金や慰謝料が振り込まれた場合、収入とみなされるため必ず担当ケースワーカーへ報告が必要です。
もしも報告しない場合は不正受給となり、もらった保険金等以上の金額を福祉事務所から徴収される可能性があります。


隠したところで、100%バレますので、必ず報告をしましょう。
生活保護受給開始後に保険へ加入するとどうなる?

生活保護受給中に、担当ケースワーカーに内緒で新しく保険契約を結んだ場合でも、調査ですぐに発覚します。
なぜなら、生活保護受給中は定期的に保険調査が行われており、保険会社からの契約情報が必ず福祉事務所に届くためです。
無断加入が発覚するとどうなる?
- 保護費の返還
- 保護の減額・停止
- 虚偽申告とみなされる可能性
生活保護では「資産を持っていないこと」が前提となるため、貯蓄型保険への加入は基本的に認められていません。

ただ、預貯金をすることは認められているため、お金を残しておきたい場合は保険ではなく、預貯金で対応しましょう。

交通事故の慰謝料も調査される

生活保護受給中の方が交通事故に遭った場合、加害者側の保険会社に対して、福祉事務所は次の情報を調査することができます。
- いつ支払われるか
- いくら支払われるか
- 何名に支払われるか
これらの情報は、事故による慰謝料や治療費が「収入」として扱われる場合があるため、福祉事務所にとって重要な調査項目です。
慰謝料・保険金が振り込まれた場合は、必ず担当ケースワーカーに収入申告してください。
申告を怠ると、不正受給として扱われることがあります。
まとめ|生活保護では保険も「資産」として扱われる

生活保護制度では、保険の解約返戻金は預貯金と同じ資産として扱われるため、申請時や受給中に必ず調査が行われます。
- 生活保護法29条により保険調査が可能
- 申請時も受給中も調査される
- 返戻金が最低生活費以上 → 申請不可
- 返戻金が半分以上 → 初回支給額が減額
- 無断加入や未申告は不正受給になる
- 保険金・慰謝料は必ず申告が必要
生活保護の申請を考えている場合は、現在加入している保険の種類や返戻金を正しく把握し、必ずケースワーカーに申告しましょう。

