児童扶養手当は、母子家庭・父子家庭などひとり親家庭の生活安定を支える重要な制度です。
しかし、生活保護と同時に利用する場合、支給時期や収入認定の仕組みが複雑で、間違った理解をしているケースも少なくありません。
この記事では、多くの問い合わせが寄せられる以下のポイントを中心に、専門的にわかりやすく解説します。
- 児童扶養手当とは?どんな家庭が対象?
- 生活保護と併用できるのか
- 支給日・支給スケジュール
- 収入認定のタイミング(いつから減額される?)
- 手当が止まる時の注意点(特に子どもの高校卒業時)
ひとり親家庭にとってとても大切な制度ですので、ぜひ最後まで読んで知識を正しく身につけてください。
児童扶養手当とは?児童手当との違いを明確に理解しよう

児童扶養手当とは、ひとり親家庭(母子家庭・父子家庭など)に支給される国の制度です。
離婚・未婚・死別などにより、父または母のいずれかがいない家庭の生活を支援する目的で作られています。
よく混同されるのが「児童手当」との違いです。
- 児童手当:中学3年生までの子どもがいる家庭へ支給(全国共通)
- 児童扶養手当:ひとり親家庭への支援(所得制限あり)
ひとり親の場合、児童手当と児童扶養手当の両方を受給できます。
児童扶養手当の支給日とスケジュール

児童扶養手当は、次の3回に分けて4ヶ月分まとめて支給されます。
- 4月(12〜3月分)
- 8月(4〜7月分)
- 12月(8〜11月分)
支給日は原則毎年11日です。
たとえば、8月11日には「4・5・6・7月分」が入金されます。
ただし注意すべきポイントは「何月分」という呼び方です。
8月分=8月に支給されるという意味ではないため、支給月と対象月を混同しないようにしましょう。
実際、福祉事務所やケースワーカーでもこの部分を誤解していることがあります。

生活保護と児童扶養手当の関係|収入認定はいつから?

生活保護と児童扶養手当は併用できますが、生活保護の計算上は「収入」として扱われます。
なお、収入認定が始まるのは、児童扶養手当が実際に支給された月からです。
ケース1:児童扶養手当を受給中に生活保護が開始した場合
たとえば、3月に生活保護がスタートした場合
- 児童扶養手当の次回支給:4月11日
- 4月から収入認定開始(4月分として扱う)
ケース2:生活保護受給中に児童扶養手当の権利が発生した場合
たとえば8月から受給権が発生した場合:
- 初回支給:12月11日(8〜11月分)
- 12月から収入認定が開始
児童扶養手当は請求した翌月分から権利が発生するため、ずれが生じる点に注意が必要です。
4ヶ月分まとめて支給でも「1ヶ月ずつ」収入認定される仕組み

児童扶養手当は4ヶ月分が一括で振り込まれますが、生活保護では支給された月から4ヶ月に分けて収入認定されます。
例:8月11日に4〜7月分が支給された場合
- 4月分 → 8月に収入認定
- 5月分 → 9月に収入認定
- 6月分 → 10月に収入認定
- 7月分 → 11月に収入認定
児童扶養手当は全額が収入扱い(控除なし)

児童扶養手当は給与収入と違い、控除が一切ありません。

そのため、支給額がそのまま生活保護費の減額対象となります。
例:最低生活費が20万円、児童扶養手当41,020円の場合
20万円 − 41,020円 = 158,980円(生活保護支給額)
つまり、児童扶養手当があるからと言って、月々に使えるお金が増えるわけではありません。

ただし、児童扶養手当がある=母子加算がつくため、単身世帯等と比べると、最低生活費は多くなります。

児童扶養手当の受給はいつまで?高校卒業がポイント

児童扶養手当が支給される期間は、原則として18歳になった後の最初の3月31日までです。
つまり、留年・浪人がなければ高校卒業と同時に支給終了となります。
そのため、最後の支給は4月の支給(12〜3月分)です。
ここで重要なのは、手当が停止すると同時に次の変化が起こる点です。
- 母子加算の削除
- 子どもが転居した場合、世帯人数減として扱われる
この2つが4月の最低生活費に反映され、支給額が大幅に下がることがあります。

高校卒業後の支給変動の具体例

3月の最低生活費:18万円(母子加算あり)
児童扶養手当:4万円 → 実支給額 14万円の場合
4月になると…
- 母子加算の削除 −2万円
- 世帯員減少(生活扶助+生業扶助) −5万円
最低生活費は18万円 → 11万円に減少します。
さらに、児童扶養手当は最後の4ヶ月分が収入認定され続けるため:
11万円 − 4万円 = 7万円
→ 4月の生活保護支給額は7万円まで減ります。
前月14万円だったため、いきなり7万円も減ってしまうことになります。
なお、少ないからと言って、生活保護費の追加支給はありませんし、
児童扶養手当が止まる時に最も気をつけるべきこと

多くの受給者が間違えるのが、最後の児童扶養手当(4ヶ月分)を早めに使い切ってしまうことです。
例で見ると、4月〜7月までは「収入認定」されていますが、実際の生活保護支給額は非常に少なくなります。
その結果:
- 4月:18万円(児童扶養手当11万円 + 生活保護7万円)
- 5月:12万円(児童扶養手当5万円 + 生活保護7万円)
- 6月:7万円(生活保護のみ)
- 7月:7万円(生活保護のみ)
児童扶養手当を5月で使い切ると、6〜7月は極端に苦しい生活になります。
福祉事務所へ「生活できない」と相談しても、支給額は変わりません。

なお、足りないからと言って、借金をした場合は収入認定の対象となりますので、この少ない金額で生活しなければいけません。


したがって、手当が止まる時期は特に慎重にお金を使うことが重要です。
まとめ|児童扶養手当と生活保護は併用できるが仕組みを理解しておくことが重要

児童扶養手当と生活保護は併用できますが、次のポイントを理解していないと大きなトラブルになります。
- 支給は年3回(4・8・12月)
- 収入認定は「支給された月から4ヶ月間」
- 控除はなく全額が減額対象
- 高校卒業で手当は終了(母子加算も同時に削除)
- 最後の支給は計画的に使わないと生活が苦しくなる
生活保護を受給しているひとり親世帯にとって、児童扶養手当は大切な支えです。
しかし、仕組みが複雑なため正しく理解しておくことが、安定した生活につながります。
疑問があれば必ずケースワーカーへ相談し、誤解のないよう確実に管理していきましょう。

