福祉事務所の調査権限とは
福祉事務所は生活保護法第29条を根拠に収入調査
や金融機関調査等の各種調査を行っています。
この調査結果をもとに生活保護の決定や不正受給の確認をしています。
改正内容
生活保護法が改正されるまでは
①資産及び収入
についてのみ調査権限がありました。
平成26年7月1日改正により
①資産及び収入
(生業もしくは就労又は求職活動の状況、扶養義務者の不要の状況、他の法律による扶助、を含む。)
②健康状態
③他自治体における生活保護の有無
④その他政令で定める事項
について福祉事務所は調査することができるようになりました。
また、生活保護を受けていた期間に限定されますが、生活保護を廃止した後でも上記
①~④については調査することができるようになりました。
さらにさらに、それまでは回答義務がありませんでしたが
官公署等への情報提供の求めに対して回答義務が付きました。
個人的な感想
これは、かなり良い法改正だと思います。
調査範囲が増えたことも、もちろんですが、
特に官公署等に対して回答義務のある調査ができるようになった点が非常に良いです。
法改正される前は回答義務がないため、調査依頼をしても回答が返って来ないことも、しばしばありました。
生活保護と同じ厚労省の管轄の年金事務所ですら「個人情報」を理由に
年金額、支給開始時期、3号被保険者を含む年金受給権の有無等については回答してもらえませんでした。
年金額等の調査ができなかったことが特に問題で、不正受給(しかも高額)が発生する原因でした。
例えば年金がまとめて振り込まれるような場合(遡求金がある場合)、振り込まれてからしか
調査することができませんでした。
また調査しようにも振込先の金融機関がわからないので、まずは振込先の金融機関を探す必要がありました。
(調査の流れ:年金振込み→金融機関一斉調査→振込先金融機関に調査→返還金又は徴収金の調書作成)
返還金又は徴収金の調書作成までに大体1ヶ月程度は掛かるため
わかった頃には既に使い込まれているなんてことが、頻繁に起きていました。
それが法改正により、年金が振込まれる前から金額と振込日もわかるため、振込日当日に
返還金又は徴収金の処理ができるようになったのです。
まだ官公署等以外(金融機関、企業、保険会社等)には、回答義務のある調査ができません。
調査権限があれば防げる不正受給は、まだまだあります。
もちろん何でもかんでも調査権限を付与する必要はありませんが
収入及び資産に関する調査権限の拡大は、生活保護法の適正運用には絶対に必要だと思います。