葬祭扶助とは生活保護制度で定められている8種類の扶助の1つです。
葬祭扶助の項目は広義的には下記のとおり全部で4項目です。
2.死体の運搬
3.火葬又は埋葬
4.納骨その他葬祭のために必要なもの
葬祭扶助の趣旨
葬祭扶助とは死亡した方の最低限の葬祭に必要な費用に充てるための費用です。
生活保護受給者が亡くなった場合や生活保護受給者が喪主となった場合でも、最低限度のお葬式ができる費用が生活保護費から支給されます。
ただし、生活保護受給者が亡くなった場合も想定されていることから、支給対象者が他の扶助と異なり、少し特殊な取り扱いとなっています。
支給対象者
葬祭扶助の支給対象者は申請者が喪主で且つ最低限度の生活を維持することのできない方です。
ここで注意したいのが「申請者」がということです。
支給対象者は生活保護受給者に限られません。
生活保護受給中の親族、もしくは生活保護受給中でない親族が亡くなり、生活保護受給者が喪主になった場合、喪主である生活保護受給者は葬祭費用を捻出することができなたいめ、葬祭扶助が支給されます。
これは、納得していただけると思います。
では、生活保護受給者本人が亡くなった場合はどうなるのか?
親族が葬祭費を負担しなければいけないのでしょうか?
実は、生活保護受給者が亡くなった場合、喪主となる方が生活保護を受給していなくても最低限度の生活を維持することができない状況と判断されれば、葬祭扶助が支給されます。
ここで言う「最低限度の生活を維持することができない」=「生活保護の条件を満たす」というわけでは必ずしもありません。
葬儀代を負担すると生活保護に陥る可能性があるほど、負担が大きいと判断されれば、たとえ生活保護を今までも、そしてこれからも受給する予定のない方でも葬祭扶助の支給を受けることができます。
また、例外として、亡くなった生活保護受給者に扶養義務者がいない場合は、民生委員や施設長が代わりに葬儀を行えば、民生委員や施設長に対しても、その葬祭費用が葬祭扶助から支給されます。
支給方法
支給方法は現金支給です。
葬祭扶助は追加支給で支給されます。
ただし、下記の注意点で詳しく書きますが、葬祭扶助は決まった金額を支給するものはなく、最低限の葬祭費に実際にかかった費用を現金で支給するだけなので、その性質は現物支給に近いです。
また、葬祭扶助の多くは直接葬儀屋に支払われることが多いため、医療扶助や介護扶助に似ています。
支給金額
葬祭扶助の支給金額は、最低限度の葬祭費実額が支給されます。
そのため、下記で葬祭扶助の支給金額内訳について、詳しくご紹介しますが、実際に葬祭扶助を受け取る方は、支給金額の内訳については気にする必要はありません。
葬祭扶助基準は下記のとおり全部で3項目あります。
2.火葬費
3.運搬費
それぞれの金額の合計金額が葬祭扶助の支給金額となります。
ではそれぞれの項目について説明します。
基準額
級地及び大人か小人かによって変わります。
1級地及び2級地の場合
大人 209,000円以内
小人 167,200円以内
3級地の場合
大人 182,900円以内
小人 146,300円以内
全国一律で上記の金額を上限として支給されます。
火葬費
級地及び大人か小人かによって変わります。
1級地及び2級地の場合
大人 600円
小人 500円
3級地の場合
大人 480円以内
小人 400円以内
葬祭費用が1.基準額を越える場合、上記の金額が支給されることになっていますが葬祭地の市町村条例に定める火葬に要する費用の方が高い場合は、その金額を上限として支給されます。
つまり市町村によって支給額が違います。
運搬費
葬祭費用が1.基準額を超える場合、運搬に要する費用が
1級地及び2級地の場合15,580円を超える場合は7,480円以内
3級地の場合13,630円を超える場合は9,430円以内
全国一律で上記の金額を上限として支給されます。
葬祭扶助の注意点1:葬儀を行う前に申請が必要
葬儀を行う費用がない場合に支給されるのが葬祭扶助です。
そのため、葬儀を行う前に必ず申請が必要となります。
葬儀を行った後であれば、それが無理に借金等をして掻き集めたお金であったとしても葬儀を行う資力があったと判断されるため、支給対象となりません。
生活保護全般に言えることですが、生活保護は国の制度です。
後で市役所の窓口に来て、葬祭扶助を支給してくれとゴネても、市職員にはどうすることもできません。
必ず葬儀費用に困った場合は必ず葬儀を行う前に福祉事務所に相談に行きましょう。
葬祭扶助の注意点2:葬儀の内容は最低限度のみ
葬祭扶助は生業扶助や教育扶助などのように決まった金額が支給されるわけではありません。
最低限度の葬儀を行った場合に、その葬儀に掛かった費用が支給されるのみです。
例えば葬祭扶助費から20万円支給されるから、自分達で30万円負担すれば50万円の葬儀ができる!わけではありません。
この場合、葬祭扶助費は一切支給されず、葬儀にかかった費用50万円全額を自己負担しなければいけません。
このように葬祭扶助を葬儀代の一部を補填するような使い方はできません。
仮に1円でも最低限度の葬儀代を超える場合は、支給対象となりませんので、気をつけましょう。
まとめ
生活保護制度で定められている8種類の扶助のうち、葬祭扶助について、ご紹介させていただきました。
葬祭扶助は他の7種類の扶助と違い支給対象者が生活保護受給者に限りません。
そのため、生活保護受給者本人が亡くなった場合でも、その親族または民生委員等が葬儀を開くことができるので、亡くなった後の心配をする必要はありません。
ただし、葬祭扶助を支給してもらうには、必ず事前申請が必要です。
また、決まった金額を支給されるわけではなく、最低限度の葬儀代の実費しか支給されないため、本当にこじんまりとしたものですし、少しでも最低限度の葬儀代を超える場合は1円も支給されません。
この2点だけは、どうしようもないため、葬祭扶助を申請する際には気をつけてください。