「住む場所がなくなりそう」「家賃が払えなくなった」「今夜泊まる場所もない」そんな状況に追い込まれたとき、頼れる公的な施設が日本には複数存在します。
しかし、「生活困窮者向けの施設」と一口に言っても、その種類や目的・利用条件はそれぞれ大きく異なります。どこに相談すれば施設を紹介してもらえるのか、費用はどれくらいかかるのか、分からないまま行動できずにいる方も多いのが現実です。
この記事では、生活困窮者が利用できる施設の全種類を分かりやすく整理し、それぞれの対象者・費用・利用の流れを解説します。「今すぐ助けが必要な人」から「将来に備えて情報収集したい人」まで、幅広い読者が自分に合った施設を見つけられる内容を目指しています。
生活困窮者向け施設の全体像と分類

生活困窮者が利用できる施設は、その目的・根拠法・対象者によって大きく4つに分類できます。まずはこの全体像を把握しましょう。
| 分類 | 主な施設 | 主な対象者 |
|---|---|---|
| ①一時的な避難・宿泊支援 | シェルター(緊急一時宿泊施設)、自立支援センター | 住所を失った・今夜泊まる場所がない人 |
| ②中期的な生活支援住居 | 無料低額宿泊所、日常生活支援住居施設 | 生計困難者・生活保護受給者など |
| ③保護施設(生活保護法) | 救護施設、更生施設、医療保護施設、授産施設 | 生活保護受給者(主に障害・疾患がある方) |
| ④特定の状況・属性別施設 | 母子生活支援施設、障害者支援施設、グループホーム | 母子家庭・障害者・高齢者など |
状況が深刻であるほど「今夜の宿泊場所」という緊急ニーズが最優先になります。住所がなくても利用できる施設もあるため、まず「①一時的な避難・宿泊支援」から確認していきましょう。
施設利用の大前提:「まず相談」が入口
生活困窮者向け施設のほとんどは、直接施設に連絡するのではなく、自治体の相談窓口(自立相談支援機関・福祉事務所)を通じて紹介・入所となるのが基本の流れです。まず電話一本でも相談することが、施設利用への最初のステップになります。
【分類①】緊急・一時的な宿泊支援施設

「今夜泊まる場所がない」「路上で過ごしている」という状況の方が最初に利用できる施設が、緊急一時的な宿泊支援施設です。
シェルター(生活困窮者一時宿泊施設)
シェルターは、住居のない生活困窮者に対して原則3ヶ月以内の期間、宿泊場所・衣食の提供などを行う施設です。生活困窮者自立支援法に基づく「一時生活支援事業」の一環として、自治体(または委託を受けたNPO・社会福祉法人)が運営します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 住居のない生活困窮者で、収入等が一定水準以下の方。住所不定でも利用可 |
| 提供サービス | 宿泊場所・食事・衣類の提供、生活相談、就労支援への橋渡し |
| 利用期間 | 原則3ヶ月以内(状況に応じて延長の場合あり) |
| 費用 | 原則無料〜低額(自治体により異なる) |
| 利用方法 | 自立相談支援機関・福祉事務所に相談→施設紹介 |
シェルター滞在中は、自立相談支援事業と連携し、就労支援や住居確保に向けたサポートが同時に進みます。シェルターを利用することで住所が確保され、そこから生活保護の申請や次のステップへ進むことができます。
生活困窮者・ホームレス自立支援センター
自立支援センターは、生活困窮者やホームレス状態にある方、あるいはホームレスになるおそれのある方を対象とした施設です。都道府県・市区町村が主体となり、東京・大阪・名古屋など大都市圏を中心に設置されています。
シェルターと異なる点は、就労支援を中心に据えた「自立のための総合支援」を行うことです。宿泊・食事(1日3食)・入浴設備などの生活基盤を提供しながら、ハローワークとの連携による就職活動サポート、生活指導、健康管理まで一体的に支援します。就労意欲がある方は、センターの支援によって自立を目指すことが可能です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 生活困窮者・ホームレス・ホームレスになるおそれがある方で、就労意欲がある方 |
| 提供サービス | 宿泊・食事・入浴・就労支援・生活指導・健康管理 |
| 設置地域 | 東京・大阪・名古屋・横浜・京都など大都市部が中心 |
| 費用 | 原則無料〜低額 |
| 利用上限 | 自立支援事業の利用は3回まで(再入所は6ヶ月の間隔が必要) |
【分類②】中期的な生活支援住居

シェルターや自立支援センターでの一時支援を経た後、または比較的安定した状態で生活支援が必要な方が利用するのが、以下の施設です。
無料低額宿泊所
無料低額宿泊所は、社会福祉法第二条第三項第八号に基づく第二種社会福祉事業として、生計困難者に無料または低額な料金で簡易住宅・宿泊場所を提供する施設です。NPO法人や社会福祉法人、株式会社など民間事業者が運営しており、都道府県への届出が必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 生計困難者(要保護者及びそれに準ずる低収入のために生計が困難な方) |
| 入居条件 | 入居者の50%以上が生活保護受給者であることが目安(施設による) |
| 提供内容 | 居室・共用設備の利用。食事や生活支援サービスを提供する施設もある |
| 費用 | 無料〜低額(生活保護受給者は保護費から支払う場合が多い) |
注意:「貧困ビジネス」問題と2025年改正
一部の無料低額宿泊所では、劣悪な居住環境にもかかわらず生活保護費のほぼ全額を徴収する「貧困ビジネス」が問題視されてきました。
これに対応するため、2020年には厚生労働省令による最低基準(設備・処遇基準)が整備されました。さらに2025年4月施行の改正社会福祉法では、届出義務違反(無届・虚偽届出)に対して30万円以下の罰則規定が新設されるなど、規制が強化されています。
入居を検討する際は、都道府県に届出がされた施設かどうかを必ず確認しましょう。

日常生活支援住居施設
日常生活支援住居施設は、2020年の法改正により新設された施設類型です。無料低額宿泊所のうち、一定の人員・設備基準を満たし、都道府県知事の認定を受けた施設が「日常生活支援住居施設」として認定されます。生活保護受給者に対して、生活支援員による日常生活上の支援(買い物補助・服薬管理・外出支援など)が行われます。
単なる宿泊提供にとどまらず、生活スキルの習得・社会復帰に向けた包括的な支援が受けられる点が特徴です。
【分類③】保護施設(生活保護法に基づく施設)

生活保護法に基づく「保護施設」は、主として生活保護受給者を対象とした入所施設です。全国に約280か所設置されており、種別ごとに目的・対象が異なります。
救護施設
救護施設は、生活保護法第38条に基づく保護施設の中で最も利用者数が多い施設です(全保護施設利用者のうち約7割以上)。身体上または精神上に著しい障害があり、日常生活を営むことが困難な要保護者を対象に、住居・食事・日常生活上の支援を提供します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 身体・精神に著しい障害があり日常生活が困難な生活保護受給者 |
| 目的 | 長期的な生活の場の提供。退所前提ではなく継続入所が基本 |
| 費用 | 生活保護受給者は無料(食費・光熱費含む)。非保護者は全額自己負担 |
| 入所方法 | 福祉事務所を通じた措置(本人・家族の申請後、福祉事務所が決定) |
更生施設
更生施設は、身体上または精神上の理由により養護および生活指導を必要とする要保護者を入所させ、生活扶助を行うとともに、自立・社会復帰を目指す施設です。救護施設と異なり、「将来の独り立ち(退所)」を前提とした支援を行います。一般的には1〜2年程度での退所が目安となっています。
入所期間1〜2年程度が目安(状況に応じて延長の場合あり)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 養護・生活指導が必要な生活保護受給者(アルコール依存・DV被害・精神疾患がある方など) |
| 目的 | 生活指導・就労訓練を通じた地域生活への自立・社会復帰 |
| 費用 | 生活保護受給者は無料(食費・光熱費含む) |
保護施設の全種類一覧
| 施設名 | 根拠 | 目的・対象 |
|---|---|---|
| 救護施設 | 生活保護法第38条1号 | 身体・精神に著しい障害があり日常生活困難な要保護者の生活扶助 |
| 更生施設 | 生活保護法第38条2号 | 養護・生活指導を要する要保護者の自立支援 |
| 医療保護施設 | 生活保護法第38条3号 | 医療が必要な要保護者への医療給付 |
| 授産施設 | 生活保護法第38条4号 | 就労が困難な要保護者への就労機会・技能訓練の提供 |
| 宿所提供施設 | 生活保護法第38条5号 | 住居のない要保護者への宿所提供(現在は利用ほぼなし) |
保護施設と生活保護の関係
救護施設・更生施設などの保護施設は、利用者のほぼ全員が生活保護受給者です(更生施設では99.6%が生活保護受給者というデータがあります)。

生活保護を受給している方は食費・光熱費を含む利用料が無料になります。一方、生活保護を受給していない場合は自費入所となり全額自己負担となるため、事実上、生活保護申請と一体的に手続きを進めることが多いです。

【分類④】特定の状況・属性に応じた施設

生活困窮者の状況は一人ひとり異なります。ひとり親・障害者・高齢者など、属性や状況に応じた専門的な施設も存在します。
母子生活支援施設
母子生活支援施設は、18歳未満の子どもを養育する母子家庭または母子家庭に準ずる家庭の女性と子どもが入所できる施設です。経済的困窮だけでなく、DV(家庭内暴力)被害・離婚・その他の生活上の問題を抱えた母子世帯の保護と自立促進を目的としています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 18歳未満の子どもを養育している困窮状態の母親(DV被害者を含む) |
| 提供内容 | 居室・生活支援・就労支援・子育て支援・退所後の相談対応 |
| 費用 | 世帯の所得に応じた費用負担(低所得世帯は免除または低額) |
| 入所方法 | 市区町村への申請→入所決定(DV緊急の場合は配偶者暴力相談支援センターからも) |
障害者支援施設・グループホーム
障害(身体・知的・精神)のある生活困窮者は、障害者向け施設・グループホームを活用することが現実的な選択肢になります。
障害者グループホーム(共同生活援助)は、障害者が家庭的な環境で共同生活を送りながら、日常生活上の支援を受けられる居住系サービスです。国・自治体からの補助があるため、住民税非課税世帯では負担額が月0〜1万円程度になるケースも多く、生活困窮者でも入居しやすい環境が整っています。
| 施設の種類 | 主な対象 |
|---|---|
| 障害者グループホーム(共同生活援助) | 障害のある方で地域での共同生活を希望する方 |
| 障害者支援施設(入所) | 重度の障害があり、地域での単独生活が困難な方 |
居住支援法人・住宅セーフティネット制度
近年注目が高まっているのが、居住支援法人と住宅セーフティネット制度です。保証人のいない単身高齢者・低所得者・外国人などが一般の民間賃貸住宅に入居しやすくなるよう、都道府県に登録された「居住支援法人」(NPO・社会福祉法人等)が、入居支援・家賃債務保証・見守りなどを行います。施設への入所ではなく、一般の住宅に住み続けながら支援を受けるモデルです。
施設を利用するための相談窓口と手続きの流れ

相談窓口の一覧
| 窓口 | 対応内容 | 連絡先の目安 |
|---|---|---|
| 自立相談支援機関 | 生活困窮全般の相談→施設紹介・支援プラン策定 | 市区町村の福祉課・社会福祉協議会 |
| 福祉事務所 | 生活保護・保護施設(救護施設・更生施設等)への入所手続き | 都市部では区役所内に設置 |
| よりそいホットライン | 緊急の生活相談・夜間・休日も対応 | 0120-279-338(24時間・無料) |
| 配偶者暴力相談支援センター | DV被害者の一時保護・母子生活支援施設への紹介 | 都道府県ごとに設置(配偶者暴力相談支援センターで検索) |
| NPO・支援団体の相談窓口 | 行政窓口の補完・アウトリーチ型支援 | 各地域の支援団体(よりそいホットラインから紹介可) |
施設入所までの基本的な流れ
1.相談窓口に連絡(電話・訪問)
市区町村の自立相談支援機関・福祉事務所・よりそいホットラインに連絡。住所なし・夜間でも対応可能な窓口あり。
2.状況のヒアリング・アセスメント
支援員が現在の生活状況・健康状態・経済状況を丁寧に聞き取り、最適な施設や支援策を検討。
3.施設の紹介・マッチング
状況に応じたシェルター・自立支援センター・無料低額宿泊所などを紹介。緊急性が高い場合は即日入所のケースも。
4.入所・並行して生活再建の支援
施設入所後も、就労支援・生活保護申請・住居探しなど、次のステップへ向けた伴走型支援が継続される。
5.退所・地域生活への移行
就労・住居確保・生活保護受給などで生活の基盤が整ったタイミングで施設を退所し、地域生活へ移行。
注意点:住所がなくても相談・入所できます
「住所がないから相談できない」と思っている方が多いですが、住所不定の状態でも相談窓口は受け付けてくれます。シェルターや自立支援センターは住所不定の方も対象です。「住所がないと生活保護を申請できない」という思い込みも誤りで、施設への入所を通じて住所を確保し、その後に生活保護を申請するという流れも一般的です。


施設別早見表:自分に合った施設を探す

| 施設名 | 緊急性 | 費用 | 対象の目安 |
|---|---|---|---|
| シェルター(一時宿泊施設) | ★★★ 高 | 無料〜低額 | 今夜泊まる場所がない・住所不定の方 |
| 自立支援センター | ★★★ 高 | 無料〜低額 | 就労意欲があるホームレス・生活困窮者 |
| 無料低額宿泊所 | ★★ 中 | 低額〜(生活保護費から支払いの場合も) | 生計困難者・生活保護受給者 |
| 救護施設 | ★ 中〜長期 | 無料(生活保護利用) | 重度の身体・精神障害がある生活保護受給者 |
| 更生施設 | ★ 中期 | 無料(生活保護利用) | 自立を目指す養護・生活指導が必要な生活保護受給者 |
| 母子生活支援施設 | ★★ 中〜高 | 所得に応じた負担 | 子どもを養育する困窮状態の母親・DV被害者 |
| 障害者グループホーム | ★ 中〜長期 | 低額〜(補助あり) | 障害のある生活困窮者で地域生活を希望する方 |
施設利用に関するよくある疑問

Q1. 施設に入ると「生活保護受給者」になってしまう?
施設の種類によります。シェルターや自立支援センターは生活保護とは別の制度(生活困窮者自立支援法)に基づくため、生活保護を申請しなくても利用できます。一方、救護施設・更生施設などの保護施設は生活保護受給が前提です。「生活保護は受けたくない」という方でも、まず相談窓口で状況を話すことが大切です。

Q2. 家族に知られずに施設を利用できる?
生活困窮者自立支援制度には「扶養照会」(家族への確認義務)はありません。シェルター・自立支援センターを利用しても、家族に自動的に連絡が行くことはありません。生活保護申請を伴う場合は扶養照会が発生しますが、近年は照会の範囲が縮小されています。


Q3. 施設に持ち込める荷物はどのくらい?
施設によって異なりますが、緊急性の高いシェルターでは「最低限の荷物」での入所が基本です。衣類・貴重品・常用薬などを優先して準備しましょう。施設スタッフが残置物の処理や引越しのサポートをしてくれる場合もあります。詳細は入所前に窓口で確認してください。
Q4. ペットがいる場合はどうなる?
ほとんどの公的施設ではペットの持ち込みが認められていません。ただし一部のNPOや支援団体では、ペット同伴での一時保護に対応しているケースもあります。まず相談窓口に「ペットがいる」と伝えることで、対応可能な支援先を探してもらえる場合があります。
Q5. 外国籍でも施設を利用できる?
在留資格がある外国籍の方は、生活困窮者自立支援制度の相談・施設利用が可能です。自治体によっては多言語対応の窓口や支援員が配置されている場合もあります。まずよりそいホットライン(0120-279-338)に電話して状況を伝えてください。
まとめ:施設は「一時的な避難場所」ではなく「自立への出発点」

- 生活困窮者が利用できる施設は「緊急宿泊支援・中期生活支援・保護施設・属性別施設」の4分類に整理できる
- 住所がなくても利用できるシェルター・自立支援センターが「最初の入口」として機能する
- 保護施設(救護施設・更生施設)は生活保護受給者なら無料で利用でき、長期的な生活支援が受けられる
- 母子家庭・障害者・高齢者など属性に応じた専門施設も多数あり、状況に合った選択が重要
- 施設利用の入口はすべて「相談窓口への連絡」。まず一本の電話が状況を変える第一歩
緊急・相談窓口まとめ
- 市区町村の福祉課・生活支援課(平日窓口)
- 社会福祉協議会(自立相談支援・生活福祉資金貸付)
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料・住所なしでも相談可)
- 厚生労働省「自立相談支援機関 窓口一覧」(公式HPで検索)
施設に入ることは「負け」でも「恥」でもありません。病気のときに病院へ行くのと同じように、生活が立ち行かなくなったときに支援施設を使うのは、社会が用意した正当な権利です。一人で抱え込まず、まず電話一本かけてみてください。あなたの状況を変えるための第一歩は、そこから始まります。

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