結論:生活保護受給者がパチンコをしても違法ではない

生活保護受給者がパチンコ・競馬・競艇などのギャンブルを行っても、法律上の罰則は一切ありません。
これは誤解されやすいポイントですが、「生活保護費をパチンコに使う=違法」「パチンコをしたら生活保護は廃止」といったルールは存在しません。
その理由を、法律から順に丁寧に解説していきます。
なぜパチンコが許されるのか?生活保護の原則を解説

生活保護制度は、日本国憲法第25条に基づいて作られています。
日本国憲法 第25条1項
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」
生活保護法は、この理念に沿って「健康で文化的な生活を守るための最低限の費用を支給する制度」です。
ポイントは文化的な生活という部分です。
映画、漫画、カフェ、娯楽用品などは文化的生活の一部であり、その延長で「パチンコ・競馬・競艇などの娯楽も完全禁止にはできない」と判断されます。
つまり、生活保護受給者がパチンコをするのは、制度の理念に反しないため禁止されていない。
ということです。
生活保護費をパチンコに使っても罰則はない

生活保護制度には、パチンコを禁止する法律も罰則も存在しません。
- パチンコをしただけでは保護廃止にできない
- ギャンブルを理由に罰金やペナルティもない
- 「娯楽禁止」というルールも存在しない
そのため、ケースワーカーは市民から
「生活保護受給者がパチンコしてる!市役所は何をしてるんだ!」
と通報されても、法律上できることはほとんどありません。
もちろん指導や注意はしますが、それは「お願いレベル」であり、 法的な強制力はありません。
生活保護受給者がパチンコをしている場合、ケースワーカーはどう対応する?

実務上、福祉事務所の対応は次の通りです。
①パチンコを見つけたら「注意」はする
パチンコ店で受給者を見つけた場合、ケースワーカーは、
- 生活費が不足していないか
- 家賃や光熱費を滞納していないか
- 生活が破綻する恐れがないか
などを確認するため、声掛けや指導を行います。

②強制力はほぼゼロ
たとえ指導しても、生活保護受給者に対してパチンコをやめさせることはできません。
なぜなら、パチンコをしてはいけないという法律がないためです。
③パチンコだけを理由に廃止はできない
生活保護費をパチンコに使っているという理由だけで廃止処分を行うと、裁判になった際に福祉事務所側が負ける可能性が極めて高いです。
過去の自治体の条例:小野市の「パチンコ禁止条例」はどうなった?

兵庫県小野市が2013年に制定した「パチンコ禁止条例(正式名称:福祉給付制度適正化条例)」は大きな話題になりました。
しかし、この条例の内容を正確に読むと、「給付金をパチンコ等に費消し、その後の生活の維持が困難になるような事態を招いてはならない」と書かれているだけで、パチンコする行為そのものは禁止していません。
つまり小野市のような条例があっても、「ギャンブル禁止」という意味ではないのです。
パチンコしても保護廃止できない理由

生活保護は憲法に基づく権利であり、廃止や停止には明確な理由が必要です。

ギャンブル行為は以下の理由に該当しません。
- 生活保護法に「ギャンブル禁止」の規定がない
- 行為そのものが違法ではない
- 娯楽は「文化的生活」の範囲として認められている
- 強制力のある指導根拠が存在しない
したがって、 パチンコする=不正受給ではないということになります。

ただし「生活が成り立たないレベル」なら問題になる

とはいえ、生活保護費をパチンコに使った結果、次の問題が起きた場合は要注意です。
- 家賃を滞納する
- 食費がなくなる
- 光熱費を払えない
- 借金を繰り返す
- 生活が破綻する
こういった「生活破綻」が生じると、以下のような措置が取られます。
- 生活支援指導
- 金銭管理(代理納付)
- 改善できない場合、他制度への繋ぎ直し
それでも、パチンコ自体を理由に生活保護を廃止することはできません。
パチンコと不正受給の違い

混同されがちですが、
パチンコをする → 問題なし
保護費を隠す・嘘をついて受給 → 不正受給
とまったく別物です。
不正受給になる行為とは
- 働いて得た収入を申告しない
- 同居人を隠して生活保護を受ける
- タンス預金等の資産を隠す
- 親族等から扶養されているのに扶養を隠す
等です。
ギャンブルはここに含まれません。
生活保護費をパチンコに使わせないためには?

合法なので、福祉事務所が禁止することは不可能です。
唯一の方法は、生活保護法そのものを改正すること。
制度自体に「ギャンブル禁止」の条文を作らなければ、どの自治体も禁止することはできません。
生活保護とパチンコに関する市民の誤解

市民からの問い合わせで最も多いのが、「生活保護のくせにパチンコをしているのはおかしい」という意見です。
しかし、制度上は以下の誤解があります。
誤解①パチンコは違法
→ パチンコをすることは違法ではありません。
誤解②パチンコ=不正受給
→ パチンコをすることは生活保護法上でも認められているため、不正受給にはなりません。
誤解③市役所が止めるべき
→ 法律上、福祉事務所にパチンコを止める権限はありません。
元ケースワーカーのまとめ:娯楽は禁止できないが「生活が成り立つか」が重要

生活保護受給者がパチンコをしても違法ではない。
これが法律に基づいた正しい結論です。
しかし、受給者に伝えたいのは以下の点です。
- パチンコをする自由は生活保護受給者にはある
- しかし、生活費を失えば困るのは生活保護受給者本人
- 今後の生活を安定させるために節度を持ってパチンコをする必要がある
生活保護は、生活を立て直し、自立を目指すための制度です。
ギャンブルで生活が崩れるようであれば、本末転倒です。
制度を正しく理解し、適切に活用することが大切です。

