生活保護を受給している方、またはこれから申請を検討している方にとって、「薬代はどうなるのか」「自己負担はあるのか」「どうやって薬をもらうのか」は重要な関心事です。
特に持病があり定期的に薬が必要な方にとっては、切実な問題でしょう。
本記事では、生活保護における薬代の扱い、医療扶助の仕組み、処方薬の受け取り方、注意点、そしてよくある疑問まで、具体例を交えて詳しく解説します。

生活保護における薬代の基本

結論:薬代の自己負担はゼロ
生活保護受給者の薬代は、原則として全額無料です。
生活保護法第15条により、医療扶助として医療費が支給されます。この医療扶助には、診察料、検査費用、手術費用だけでなく、処方薬の費用も含まれています。

医療扶助の対象となる薬
保険適用の処方薬 医師が処方する保険適用の薬は、すべて医療扶助の対象です。
対象となる薬の例
- 内服薬(飲み薬)
- 外用薬(塗り薬、貼り薬)
- 点眼薬
- 坐薬
- 吸入薬
- 注射薬(医療機関で投与)
- 漢方薬(保険適用のもの)
金額の上限なし 高額な薬であっても、医学的に必要と認められれば、全額が医療扶助でカバーされます。

対象外となる薬
以下のような薬は、医療扶助の対象外です。
1. 市販薬(OTC医薬品)
- ドラッグストアで購入する風邪薬、鎮痛剤など
- 医師の処方箋がない薬
2. 保険適用外の薬
- 美容目的の薬(育毛剤、美白剤など)
- サプリメント・健康食品
- 一部の漢方薬(保険適用外のもの)
3. 予防接種
- インフルエンザワクチン(一部自治体で補助あり)
- その他の任意接種
対策 市販薬が必要な症状でも、医療機関を受診すれば同様の効果がある処方薬を無料で受け取れます。軽い風邪でも遠慮せず受診しましょう。
医療扶助の仕組み

医療券(医療扶助券)の役割
医療券とは 生活保護受給者が医療機関を受診する際に必要な証明書です。これにより、医療機関は医療費を福祉事務所に請求できます。

医療券の種類
- 医科用医療券:病院・診療所用
- 歯科用医療券:歯科診療用
- 調剤券:薬局用(医療券とセットで発行される場合が多い)
医療券の取得方法
通常の受診(予約診療)
- 福祉事務所またはケースワーカーに連絡
- 受診したい医療機関名
- 診療科
- 受診理由 を伝える
- 医療券の発行
- 福祉事務所が医療券を発行
- 郵送または窓口で受け取り
- 通常1~3日程度
- 医療機関を受診
- 医療券を窓口に提示
- 保険証は不要
- 処方箋を受け取る
- 医師が処方箋を発行
- 薬局で薬を受け取る
- 処方箋と調剤券を提示
- 薬代の支払いなし
緊急時・急病の場合
- まず受診
- 医療券がなくても受診可能
- 受付で「生活保護受給者」であることを伝える
- 速やかに福祉事務所に連絡
- 受診後すぐに連絡
- 医療券の発行を依頼
- 事後的に医療券が発行される
- 福祉事務所と医療機関が直接調整
重要 緊急時でも、必ず福祉事務所への連絡を忘れずに。連絡が遅れると自己負担を求められる可能性があります。

指定医療機関での受診
指定医療機関とは 生活保護法第49条に基づき、都道府県知事が指定した医療機関です。
原則 医療扶助による受診は、指定医療機関で行う必要があります。
確認方法
- 福祉事務所に問い合わせる
- 医療機関の窓口で確認する
- ほとんどの病院・診療所は指定を受けている
指定外医療機関を受診した場合 原則として医療扶助の対象外となり、全額自己負担の可能性があります。
例外
- 緊急時
- 近隣に指定医療機関がない
- 特定の専門治療が必要

調剤薬局での薬の受け取り
院外処方の場合
- 医療機関で処方箋を受け取る
- 指定薬局を確認
- 医療券または調剤券に記載されている薬局
- 近隣の指定薬局
- 薬局に処方箋と調剤券を提示
- 処方箋
- 調剤券(医療券に含まれる場合も)
- 薬を受け取る
- 窓口での支払いなし
- 薬剤師から服薬指導を受ける
院内処方の場合 医療機関で直接薬を受け取ります。医療券のみで対応可能です。
ジェネリック医薬品の使用

ジェネリック医薬品の原則
医療扶助ではジェネリック医薬品が原則 生活保護の医療扶助では、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用が原則となっています。
ジェネリック医薬品とは 先発医薬品(新薬)の特許が切れた後に製造される、同等の効果を持つ安価な医薬品です。
メリット
- 有効成分は先発医薬品と同じ
- 効果・安全性は同等
- 価格は先発医薬品の3~7割程度

先発医薬品を希望する場合
医学的理由がある場合 以下のような場合、先発医薬品の使用が認められます。
- ジェネリック医薬品が存在しない
- アレルギーなど個別の事情がある
- 医師が医学的必要性を認めた場合
- 薬剤の変更により症状が悪化する恐れがある
医師の判断 医師が「先発医薬品が必要」と判断した場合、処方箋に「変更不可」と記載されます。この場合、先発医薬品も医療扶助の対象となります。
患者の希望のみでは不可 「先発医薬品の方が良い気がする」という患者の希望だけでは、原則として認められません。
薬に関する注意点

1. 薬の転売は犯罪
絶対に転売してはいけません。
医療扶助で処方された薬を転売する行為は、以下の罪に問われる可能性があります・
- 詐欺罪
- 生活保護法違反
- 医薬品医療機器等法違反
結果
- 生活保護の停止・廃止
- 刑事告発
- 返還請求
発覚する経路
- 薬局での購入記録
- 福祉事務所による調査
- 警察の摘発
- 周囲からの通報
2. 重複処方の禁止
複数の医療機関で同じ薬をもらうことは不可 異なる医療機関を受診して、同じ薬を重複して処方してもらう行為は、不正受給となります。
理由
- 医療費の無駄
- 健康被害のリスク(過剰摂取)
- 転売目的の疑い
対策
- お薬手帳を活用し、服用中の薬を医師・薬剤師に伝える
- かかりつけ薬局を決める
- 定期的にケースワーカーに服薬状況を報告
3. 薬の適正使用
医師・薬剤師の指示を守る
- 用法・用量を守る
- 自己判断で服用を中止しない
- 副作用が出たら速やかに医師に相談
余った薬の処分
- 服用しきれなかった薬は、薬局や医療機関で引き取ってもらえる場合がある
- 自治体の医薬品回収ボックスを利用
- 家庭ゴミとして廃棄する場合は、自治体のルールに従う
4. 長期処方と残薬管理
長期処方の可能性 慢性疾患で継続的に薬が必要な場合、最大90日分程度の長期処方が可能です。
残薬の確認 受診時に残薬があれば、医師に伝えましょう。薬の調整により、医療費の節約になります。
お薬手帳の活用 お薬手帳に服用中の薬を記録し、常に携帯することで、重複処方や薬の飲み合わせの問題を防げます。
特殊な薬の扱い

高額な薬(分子標的薬、希少疾病用医薬品等)
全額医療扶助の対象 がん治療の分子標的薬や、難病治療の希少疾病用医薬品など、月額数十万円~数百万円する高額な薬も、医学的に必要であれば全額が医療扶助でカバーされます。
患者の負担はゼロ 民間の保険では高額療養費制度の自己負担上限がありますが、生活保護では完全に無料です。

麻薬・向精神薬
厳格な管理下で処方 医療用麻薬(がん性疼痛治療用等)や向精神薬も、医師の処方があれば医療扶助の対象です。
注意点
- 譲渡・転売は重罪
- 処方箋の厳格な管理
- 定期的な受診が必要
在宅医療の薬剤
訪問診療・訪問看護での薬 在宅医療で使用される点滴薬、注射薬、医療材料なども医療扶助の対象です。
在宅酸素療法 酸素濃縮装置のレンタル費用や酸素ボンベの費用も医療扶助でカバーされます。
トラブル時の対応

薬代を請求された場合
- 医療券の提示を確認
- 医療券・調剤券を提示したか
- 指定医療機関・薬局か
- 薬局・医療機関に説明
- 「生活保護受給者で医療扶助の対象です」
- 医療券の再提示
- それでも請求される場合
- 一旦支払いを保留し、福祉事務所に連絡
- ケースワーカーから薬局に連絡してもらう
- 誤って支払った場合
- 領収書を保管
- 福祉事務所に相談し、返金手続き
医療券の発行が間に合わない場合
- 福祉事務所に連絡
- 医療券の発送状況を確認
- 受診日に間に合わない旨を伝える
- 医療機関に事前連絡
- 生活保護受給者であることを伝える
- 医療券が後日になることを説明
- 受診当日
- 「医療券は後日提出します」と説明
- 多くの医療機関は対応してくれる
- 医療券到着後、速やかに提出
指定外医療機関を受診してしまった場合
- 速やかに福祉事務所に相談
- 事情を説明
- 事後的に医療扶助が認められるか確認
- 認められない場合
- 自己負担となる可能性
- 分割払いなど医療機関と相談
- 今後の対策
- 受診前に必ず指定医療機関か確認
- かかりつけ医を指定医療機関に設定
よくある質問

Q: 市販の風邪薬を買うことはできませんか?
A: 市販薬は医療扶助の対象外です。風邪の症状があれば、医療機関を受診して処方薬を受け取りましょう。受診により、より適切な治療も受けられます。
Q: ビタミン剤やサプリメントは処方してもらえますか?
A: 医学的に必要と認められる場合(栄養失調、特定の疾患など)、ビタミン剤が処方されることがあります。ただし、一般的な健康増進目的のサプリメントは対象外です。
Q: 薬だけもらいに行くことはできますか?
A: 原則として、薬をもらうには医師の診察を受け、処方箋を発行してもらう必要があります。「薬だけください」という対応はできません。
Q: 院外処方と院内処方、どちらが良いですか?
A: 医療扶助の場合、どちらでも自己負担はありません。医療機関の方針に従ってください。院外処方の方が薬剤師の専門的な服薬指導を受けられるメリットがあります。
Q: 薬が余ったら返品できますか?
A: 一度処方された薬の返品はできません。残薬がある場合は、次回受診時に医師に伝え、処方量を調整してもらいましょう。
Q: 家族の薬を代わりに受け取れますか?
A: 本人が受診できない正当な理由(入院、寝たきり等)がある場合、家族が代理で薬を受け取ることができます。薬局で事情を説明してください。
Q: お薬手帳は必要ですか?
A: 必須ではありませんが、強く推奨されます。重複処方や薬の飲み合わせの問題を防ぎ、適切な治療につながります。
Q: ジェネリック医薬品を拒否できますか?
A: 医学的理由がない限り、原則としてジェネリック医薬品を使用することになっています。どうしても先発医薬品を希望する場合は、医師に相談してください。
まとめ

生活保護における薬代について、重要なポイントをまとめます。
薬代の基本
- 処方薬の薬代は全額無料(自己負担ゼロ)
- 市販薬は対象外(医療機関を受診すれば処方薬がもらえる)
- 高額な薬も全額医療扶助でカバー
薬をもらう流れ
- 福祉事務所に連絡し、医療券を取得
- 指定医療機関を受診
- 処方箋を受け取る
- 指定薬局で薬を受け取る
- 窓口での支払いなし
ジェネリック医薬品
- 原則としてジェネリック医薬品を使用
- 医学的理由があれば先発医薬品も可能
重要な注意点
- 薬の転売は犯罪
- 重複処方は不正受給
- 医師・薬剤師の指示を守る
- お薬手帳を活用する
緊急時
- 医療券がなくても受診可能
- 受診後すぐに福祉事務所に連絡
トラブル時
- 薬代を請求されたら福祉事務所に相談
- 医療券が間に合わない場合は医療機関に事前連絡
生活保護の医療扶助により、薬代を心配せずに必要な治療を受けることができます。持病がある方も、経済的な理由で治療を中断することなく、安心して療養できる制度です。

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