「生活保護で薬をもらうには調剤券が必要?」「調剤券の使い方がわからない」「薬局で恥ずかしい思いをした」生活保護を受けている方が初めて薬局で薬を受け取る際、調剤券について戸惑う方は少なくありません。
調剤券とは、生活保護受給者が薬局で薬を無料で受け取るために必要な券です。医療扶助の一環として発行され、薬代の自己負担がなくなります。
厚生労働省の統計によれば、生活保護受給者の約70%が何らかの医療を受けており、その多くが調剤券を利用しています。
本記事では、調剤券の基本的な仕組みから、発行の申請方法、薬局での使い方、注意点、よくあるトラブルと対処法まで、生活保護法と実務に基づいて徹底解説します。
この記事でわかること
- 調剤券の定義と法的根拠
- 調剤券の発行申請方法(電話・窓口・郵送)
- 薬局での調剤券の使い方と流れ
- 調剤券を忘れた場合の対処法
- 調剤券が使えない薬・ケース
- よくあるトラブルと解決方法
調剤券とは何か——医療扶助の仕組み

調剤券の定義
調剤券(正式名称:調剤券) 生活保護受給者が、薬局で処方箋に基づいて薬を受け取る際に必要な券です。この券により、薬代の自己負担なしで薬を受け取ることができます。
正式名称の例
- 「生活保護法医療扶助調剤券」
- 「医療扶助券(調剤)」
自治体により呼称が若干異なりますが、機能は同じです。
法的根拠
生活保護法第15条(医療扶助) 生活保護法第15条では、医療扶助として以下が定められています。
- 診察
- 薬剤または治療材料
- 医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術
- 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
- 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
- 移送
「薬剤」の提供が医療扶助に含まれており、その実施手段として調剤券が発行されます。

調剤券の役割
1. 薬代の無料化 調剤券を提示することで、処方箋に基づく薬代が無料になります。

2. 福祉事務所と薬局の決済手段 受給者は薬代を払いませんが、薬局は後日、福祉事務所から調剤費用を受け取ります。調剤券は、その請求の根拠となります。
3. 適正な医療扶助の実施 調剤券の発行により、福祉事務所は受給者の医療状況を把握し、適正な医療扶助を実施できます。
調剤券と医療券の違い
医療券 病院やクリニックで診察を受ける際に必要な券です。
調剤券 薬局で薬を受け取る際に必要な券です。
使い分け
- 病院・クリニックで診察 → 医療券
- 薬局で薬を受取 → 調剤券
多くの場合、診察後に処方箋が出るため、医療券と調剤券の両方が必要になります。
調剤券の発行申請方法

調剤券は、福祉事務所に申請して発行してもらいます。
申請のタイミング
診察を受ける前 原則として、診察を受ける前に医療券と調剤券の両方を申請します。
緊急時の事後申請 急病など緊急の場合は、診察・調剤後に事後申請することも可能です。ただし、事前申請が原則です。

申請方法1:電話
最も一般的な方法 多くの受給者は、電話で申請しています。
手順
- 福祉事務所に電話
- 担当ケースワーカーまたは医療担当につないでもらう
- 以下の情報を伝える
- 氏名、生活保護受給者番号
- 受診する医療機関名(病院・クリニック)
- 受診予定日
- 受診する薬局名(わかれば)
- 病状・受診理由
発行方法
- 郵送:自宅に郵送される(数日かかる)
- 窓口受取:福祉事務所の窓口で受け取る
- FAX:病院や薬局に直接FAXされる(自治体による)
申請方法2:窓口
福祉事務所の窓口で直接申請
手順
- 福祉事務所に行く
- 医療担当窓口で申請
- その場で発行してもらう
メリット
- すぐに受け取れる
- 不明点をその場で質問できる
デメリット
- 福祉事務所まで行く必要がある
申請方法3:郵送・FAX
一部の自治体で可能
郵送 申請書を郵送し、調剤券を郵送で受け取ります。時間がかかるため、計画的な受診の場合に有効です。
FAX 申請書をFAXし、調剤券をFAXで受け取ります。
申請に必要な情報
基本情報
- 氏名
- 生活保護受給者番号
- 住所
- 生年月日
受診情報
- 受診する医療機関名と住所
- 受診予定日
- 病状・受診理由
薬局情報
- 利用する薬局名と住所(わかれば)
注意点 薬局は、処方箋をもらってから決めることが多いため、事前にわからないことがあります。その場合、「調剤券は後日申請」または「よく利用する薬局」を伝えましょう。
調剤券の有効期限
一般的に1か月 調剤券の有効期限は、通常1か月程度です。期限内に使用しない場合、無効となります。
処方箋の有効期限 処方箋自体の有効期限は、発行日を含めて4日間です。この期限内に薬局で調剤してもらう必要があります。
薬局での調剤券の使い方

実際に薬局で調剤券を使う流れを説明します。
ステップ1:処方箋を受け取る
病院・クリニックで診察を受け、医師から処方箋を受け取ります。
ステップ2:薬局を選ぶ
どこの薬局でも良いわけではない 調剤券に記載されている薬局、または福祉事務所が指定する薬局で調剤を受けます。

院外処方箋の場合 病院の近くの薬局(門前薬局)または、自宅近くの薬局を利用できます。ただし、調剤券に記載された薬局である必要があります。
薬局が決まっていない場合 調剤券を受け取る際、「まだ薬局が決まっていない」場合は、処方箋をもらった後に福祉事務所に連絡し、薬局を伝えて調剤券を再発行してもらいます。
ステップ3:薬局で調剤券と処方箋を提示
薬局に行く 処方箋を受け取ったら、調剤券に記載された薬局に行きます。
提示するもの
- 処方箋(医師から受け取ったもの)
- 調剤券(福祉事務所から発行されたもの)
- お薬手帳(持っている場合)
薬局の受付で伝える 「生活保護を受けています。処方箋と調剤券を持ってきました」と伝えましょう。
ステップ4:調剤を待つ
薬局で薬の調剤を待ちます。通常、10分~30分程度かかります。
ステップ5:薬を受け取る
薬剤師の説明を受ける 薬剤師から、薬の飲み方、注意点などの説明を受けます。
薬代の支払いは不要 調剤券を提示しているため、薬代の支払いは不要です。
領収書 薬局から領収書が発行される場合がありますが、金額は0円です。
ステップ6:お薬手帳に記録
薬局で、お薬手帳に調剤内容を記録してもらいます。お薬手帳は、薬の履歴管理に重要です。
調剤券を忘れた・なくした場合の対処法

調剤券を忘れた場合
薬局での対応
- 後日持参:薬は受け取れるが、後日調剤券を持参することを約束する(薬局による)
- 一旦全額支払い:薬代を一旦全額支払い、後日福祉事務所で精算(償還払い)
推奨される対応
- すぐに福祉事務所に連絡
- 調剤券を薬局にFAXしてもらえるか確認
- または、後日持参する約束をする
調剤券をなくした場合
福祉事務所に連絡 すぐに福祉事務所に連絡し、調剤券を再発行してもらいます。
再発行の手続き
- 紛失の旨を伝える
- 受診した病院と薬局を伝える
- 再発行してもらう(通常、即日または翌日)
緊急時で調剤券が間に合わない場合
事後申請 急病などで調剤券の申請が間に合わない場合、薬代を一旦全額支払い、後日福祉事務所で償還払い(精算)の手続きをします。
償還払いの手続き
- 薬局で薬代を全額支払う
- 領収書を受け取る
- 福祉事務所に連絡し、事後申請
- 領収書を提出
- 後日、支払った薬代が返金される
注意点 償還払いは例外的な措置です。できる限り、事前に調剤券を申請しましょう。
調剤券が使えない薬・ケース

すべての薬が調剤券で受け取れるわけではありません。
使えない薬1:市販薬(OTC医薬品)
医療扶助の対象外 調剤券は、医師の処方箋に基づく薬のみが対象です。薬局やドラッグストアで買える市販薬(OTC医薬品)は対象外です。
例
- 風邪薬(ルル、パブロンなど)
- 胃腸薬(大正漢方胃腸薬など)
- 湿布(サロンパスなど)
対処法 市販薬を買う代わりに、病院で診察を受けて処方箋をもらいましょう。処方薬なら調剤券で無料になります。
使えない薬2:美容目的の薬
保険適用外 美容目的の薬は、健康保険の適用外であり、医療扶助の対象外です。
例
- 美容目的のビタミン剤
- ダイエット薬
- 美容目的の皮膚科処方薬(一部)
使えない薬3:指定医療機関外の薬
指定医療機関制度 生活保護の医療扶助は、都道府県知事が指定した医療機関でのみ受けられます。
指定外の薬局 指定外の薬局では、調剤券は使えません。
確認方法 薬局が指定医療機関かどうか、福祉事務所に確認するか、薬局に「生活保護の医療扶助に対応していますか?」と尋ねましょう。
使えないケース:医師の指示外の使用
処方箋の通り 調剤券は、医師の処方箋に基づいて発行されます。処方箋にない薬を勝手に追加で購入することはできません。
よくあるトラブルと解決方法

トラブル1:薬局で「調剤券の薬局名が違う」と言われた
原因 調剤券に記載された薬局と、実際に行った薬局が違う。
解決法
- 福祉事務所に連絡
- 正しい薬局名を伝える
- 調剤券を再発行してもらう
予防法 調剤券を申請する際、利用する薬局を正確に伝える。薬局が決まっていない場合は、処方箋をもらってから連絡する。
トラブル2:薬局で「調剤券の有効期限が切れている」と言われた
原因 調剤券の有効期限(通常1か月)が過ぎている。
解決法
- 福祉事務所に連絡
- 事情を説明し、調剤券を再発行してもらう
予防法 調剤券を受け取ったら、早めに受診・調剤を受ける。
トラブル3:薬局で「この薬は医療扶助の対象外」と言われた
原因 処方された薬が、医療扶助の対象外である。
対象外の薬の例
- 保険適用外の薬
- 美容目的の薬
- 高額なバイオ医薬品で、福祉事務所の事前承認が必要なもの
解決法
- 薬剤師に、どの薬が対象外か確認
- 福祉事務所に連絡し、相談
- 医師に相談し、代替薬に変更してもらう
トラブル4:「生活保護」と言うのが恥ずかしい
心理的ハードル 多くの受給者が、薬局で「生活保護を受けています」と言うことに抵抗を感じます。
対処法
- 慣れる:何度か経験すれば慣れます
- 小声で伝える:受付で小声で伝えれば、他の客に聞こえません
- かかりつけ薬局を作る:同じ薬局を利用すれば、2回目以降は伝える必要がありません
- 調剤券を黙って渡す:調剤券を見れば、薬剤師は理解します
薬局スタッフの配慮 多くの薬局では、プライバシーに配慮してくれます。過度に心配する必要はありません。
トラブル5:薬が多すぎて飲み切れない
残薬問題 処方された薬を飲み切れず、余ってしまうことがあります。
対処法
- 医師に相談:「前回の薬が余っている」と正直に伝え、処方量を調整してもらう
- お薬手帳を見せる:お薬手帳を見せることで、重複処方を防げる
- 残薬確認サービス:薬局の残薬確認サービスを利用
重要性 残薬を減らすことは、医療費の適正化につながり、福祉事務所からも評価されます。
調剤券に関する注意点

1. 事前申請が原則
事前に申請する 診察・調剤を受ける前に、調剤券を申請することが原則です。緊急時を除き、事後申請は避けましょう。
理由
- 償還払いの手続きが煩雑
- 一時的にでも薬代を自己負担する必要がある
2. 調剤券は診療ごとに必要
1回の診療に1枚 1回の診療(診察+調剤)ごとに、医療券と調剤券が必要です。
定期通院の場合 毎月通院している場合、毎月新しい医療券と調剤券を申請します。
3. ジェネリック医薬品の推奨
ジェネリック医薬品とは 特許が切れた医薬品を、他の製薬会社が製造した、安価な薬です。
推奨される理由 医療費の削減のため、福祉事務所はジェネリック医薬品の使用を推奨しています。
対応 医師や薬剤師に「ジェネリックでお願いします」と伝えましょう。特別な理由がない限り、ジェネリックが処方されます。
4. お薬手帳を活用する
お薬手帳の重要性
- 薬の履歴管理
- 重複処方の防止
- アレルギー情報の共有
- 医療費の適正化
福祉事務所への報告 ケースワーカーが家庭訪問時に、お薬手帳を確認することがあります。
5. 不要な受診・調剤を避ける
適正受診 本当に必要な時だけ受診・調剤を受けましょう。
不適切な例
- 風邪で複数の病院を受診(ドクターショッピング)
- 余った薬があるのに、新しい薬をもらう
- 美容目的での受診
福祉事務所は、受診・調剤の内容を把握しています。不適切な医療扶助の利用は、指導の対象となります。
よくある質問(Q&A)

Q1: 調剤券なしで薬を受け取ってしまいました。どうすればいいですか?
A: すぐに福祉事務所に連絡してください。薬代を支払った場合は、領収書を持って償還払いの手続きをします。薬代を支払わず「後日持参」の約束をした場合は、調剤券を発行してもらい、薬局に持参してください。
Q2: 調剤券の薬局名を間違えました。変更できますか?
A: はい、福祉事務所に連絡して、正しい薬局名を伝えれば、調剤券を再発行してもらえます。
Q3: 処方箋の有効期限(4日)を過ぎてしまいました。調剤券はまだ有効ですか?
A: 処方箋の有効期限が切れると、その処方箋では調剤を受けられません。調剤券が有効でも、処方箋が無効では意味がありません。再度医師の診察を受けて、新しい処方箋をもらう必要があります。
Q4: 複数の病院にかかっています。調剤券は何枚必要ですか?
A: 病院ごと、受診ごとに調剤券が必要です。A病院とB病院にかかる場合、それぞれの処方箋に対応する調剤券が必要です。
Q5: 薬局を変更したいのですが、どうすればいいですか?
A: 次回から利用したい薬局を福祉事務所に伝え、その薬局名で調剤券を発行してもらいます。特に手続きは不要ですが、できれば同じ薬局を利用する方が、薬の履歴管理の面で望ましいです。
Q6: お薬手帳は必須ですか?
A: 法的には必須ではありませんが、強く推奨されます。お薬手帳がないと、薬剤服用歴管理料が高くなる場合があります。また、福祉事務所から、お薬手帳の携帯を求められることがあります。
Q7: 調剤券で漢方薬はもらえますか?
A: はい、医師が処方した漢方薬であれば、調剤券で受け取れます。ただし、薬局で自費で買う漢方薬は対象外です。
Q8: 薬局で「生活保護」と言いたくないのですが、調剤券だけ渡せば分かりますか?
A: はい、調剤券を見れば、薬局スタッフは生活保護の医療扶助であることを理解します。無理に「生活保護」という言葉を使う必要はありません。
まとめ:調剤券は医療扶助の重要なツール適切に活用を

本記事の重要なポイントをまとめます。
調剤券の基本
- 薬局で薬を無料で受け取るために必要な券
- 医療扶助の一環(生活保護法第15条)
- 福祉事務所が発行
発行申請方法
- 電話、窓口、郵送・FAXで申請
- 診察を受ける前に申請(原則)
- 緊急時は事後申請も可能
薬局での使い方
- 病院で処方箋を受け取る
- 調剤券に記載された薬局に行く
- 処方箋と調剤券を提示
- 薬を無料で受け取る
忘れた場合
- すぐに福祉事務所に連絡
- 薬局にFAX、または後日持参
- 一旦支払い、後日償還払い
使えない薬・ケース
- 市販薬(OTC医薬品)
- 美容目的の薬
- 指定医療機関外の薬局
よくあるトラブル
- 薬局名の間違い → 再発行
- 有効期限切れ → 再発行
- 対象外の薬 → 医師に相談
注意点
- 事前申請が原則
- 診療ごとに必要
- ジェネリック医薬品の推奨
- お薬手帳の活用
- 適正受診を心がける
最後に
調剤券は、生活保護受給者が薬代を気にせず、必要な薬を受け取るための重要な仕組みです。適切に活用することで、健康を維持し、治療を継続できます。
調剤券の使い方に不安がある方は、一人で悩まず、ケースワーカーや薬局の薬剤師に遠慮なく質問してください。彼らは、あなたが適切に医療を受けられるようサポートする立場です。
また、「生活保護」と伝えることに抵抗がある気持ちは理解できますが、医療従事者は守秘義務があり、プライバシーに配慮してくれます。必要以上に恥ずかしがる必要はありません。
調剤券を適切に利用し、健康な生活を送りましょう。

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