「生活保護を受けながらアルバイトしているが、年末調整は必要?」「会社から年末調整の書類を渡されたがどうすればいい?」「確定申告は必要?」生活保護を受けながら働いている方から、年末の税務手続きに関する疑問が数多く寄せられています。
結論から言えば、生活保護を受けながら働いている場合でも、勤務先が1か所で「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していれば、年末調整の対象となります。
生活保護受給者だからといって年末調整が不要になるわけではありません。
ただし、生活保護費そのものは非課税所得であるため、生活保護費だけで収入がない場合は年末調整も確定申告も不要です。
一方、「受給者が生活保護とは別の所得がある場合、年末調整もしくは確定申告が必要になります。
本記事では、生活保護を受けながら働く場合の年末調整の要否、確定申告が必要なケース、福祉事務所への収入申告との関係、2025年税制改正の影響まで、国税庁と厚生労働省の公式資料に基づいて徹底解説します。
この記事でわかること
- 生活保護受給者の年末調整の要否(働いている場合・働いていない場合)
- 年末調整が必要な3つの条件
- 確定申告が必要なケースと不要なケース
- 年末調整と福祉事務所への収入申告の違い
- 2025年税制改正(基礎控除123万円引き上げ)の影響
- 源泉徴収された税金の還付を受ける方法
生活保護と年末調整の基本——働いているか否かで決まる

生活保護費は非課税所得
生活保護費そのものには所得税がかからないため、生活保護費だけで収入がない場合、年末調整も確定申告も不要です。
働いている場合は年末調整の対象
受給者が生活保護とは別の所得がある場合、年末調整もしくは確定申告が必要になります。
重要なポイント 生活保護を受けているかどうかは、年末調整の要否に直接関係しません。年末調整が必要かどうかは、あくまで「給与所得があるか」「扶養控除等申告書を提出しているか」で判断されます。


年末調整が必要な3つの条件

年末調整の対象となるのは、以下の条件をすべて満たす場合です。
条件①:勤務先から給与を受け取っている
アルバイト・パート・正社員など雇用形態を問わず、給与として収入を得ている場合は年末調整または確定申告の対象となります。

条件②:「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している
この書類を勤務先に提出しているかどうかが、年末調整の対象となるかの分かれ目です。提出している場合は年末調整の対象となります。
扶養控除等申告書とは 家族構成や扶養親族の有無を申告する書類で、通常は入社時または年初に提出します。
条件③:年末時点で勤務している
「年末時点で勤務している」ことも条件の一つです。
年の途中で退職した場合 年の途中で退職した人は、一定の場合を除き年末調整の対象外となります。退職後に確定申告が必要になる場合があります。
生活保護受給者の年末調整——4つのケース別

ケース①:生活保護のみで働いていない
年末調整:不要 確定申告:不要
生活保護費だけで、アルバイトなどの給与所得がない場合は、年末調整も確定申告も必要ありません。
ケース②:1か所の勤務先で働いている(扶養控除等申告書を提出済み)
年末調整:必要 確定申告:原則不要
勤務先で年末調整を受けることで、税務上の手続きは完了します。
なお、アルバイトなどで得た収入が年間123万円以下であれば、所得税が発生しないため確定申告は不要です
ただし、月収が一定額(2025年は8.8万円以上)を超えると源泉徴収されるため、年間収入が123万円以下でも一旦税金が天引きされます。この場合、年末調整により全額還付されます。
ケース③:2か所以上の勤務先で働いている(ダブルワーク・副業)
年末調整:主たる勤務先1か所のみ 確定申告:必要(従たる給与が20万円超の場合)
複数の勤務先がある場合、年末調整ができるのは1社のみで、『扶養控除等(異動)申告書』を提出しているか否かで判断します。それ以外の勤務先からの収入(従たる給与)は年末調整の対象外となり、確定申告が必要です。
具体例
- A社(主たる勤務先):年収60万円 → A社で年末調整
- B社(従たる勤務先):年収30万円 → 確定申告が必要
ケース④:フリーランス・業務委託で働いている
年末調整:対象外 確定申告:必要(所得が48万円超の場合)
給与所得ではなく事業所得・雑所得として扱われるため、年末調整の対象外です。確定申告により所得を申告します。
確定申告が必要なケース・不要なケース

確定申告が必要なケース
生活保護受給者でも、以下の場合は確定申告が必要です。
①2か所以上から給与を受け取っている(従たる給与が20万円超) ダブルワークで主たる勤務先以外からの給与が年間20万円を超える場合。
②年間給与収入が123万円超で年末調整を受けていない 2025年の税制改正により、基礎控除が引き上げられ、年収123万円以下は所得税非課税となりましたが、123万円を超える場合は課税対象です。
③フリーランス・業務委託で年間所得が48万円超 事業所得・雑所得として確定申告が必要です。
確定申告が不要なケース
①生活保護費のみで給与収入がない 非課税所得のため申告不要です。
②年間給与収入が123万円以下で年末調整を受けた 年末調整により税務処理が完了しているため、確定申告は不要です。
③従たる給与が年間20万円以下 ダブルワークでも、主たる勤務先以外の給与が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要です。ただし、住民税の申告は必要となる場合があります。
年末調整と福祉事務所への収入申告の違い
生活保護受給者が働いた場合、「年末調整」と「福祉事務所への収入申告」という2つの手続きが必要です。この2つは全く別物です。
年末調整——税務上の手続き
目的 所得税の精算
提出先 勤務先(会社)
対象 給与所得
時期 年末(12月)
福祉事務所への収入申告——生活保護の手続き
目的 生活保護費の減額・増額の調整
提出先 福祉事務所(ケースワーカー)
対象 すべての収入(給与・年金・仕送り・一時金等)
時期 収入が発生した月の翌月(毎月)
働いたことによる収入の申告は、福祉事務所に対して行う必要があります。申告は、収入が発生した月の翌月に行うのが一般的ですが、収入の申告を怠ると、後に生活保護の受給資格の喪失や返還請求の対象となる可能性があるため、収入の種類や額によっては、その都度、担当ケースワーカーに相談することをオススメします。


2つの申告は必ず両方行う
重要な注意点 年末調整を会社で行ったからといって、福祉事務所への収入申告が不要になるわけではありません。逆に、福祉事務所に収入を申告したからといって、年末調整が不要になるわけでもありません。
正しい手続き
- 毎月:給与明細のコピーを福祉事務所に提出(収入申告)
- 年末:勤務先で年末調整を受ける(税務手続き)
2025年税制改正の影響——基礎控除123万円への引き上げ
2025年の税制改正により、所得税の非課税ラインが大きく変わりました。
改正前(2024年まで)
所得税非課税ライン:年収103万円以下
- 基礎控除:48万円
- 給与所得控除:55万円
- 合計:103万円
改正後(2025年から)
所得税非課税ライン:年収123万円以下
- 基礎控除:58万円(10万円引き上げ)
- 給与所得控除:65万円(10万円引き上げ)
- 合計:123万円
アルバイトに所得税がかかるボーダーラインは、2025年度の税制改正により、給与収入(年収)で123万円超となり、以前の103万円から大幅に緩和されました。
生活保護受給者への影響
メリット 年収123万円までは所得税がかからないため、源泉徴収された税金が年末調整で全額還付されます。
注意点 所得税は非課税でも、生活保護費の減額は別の計算で行われます。年収123万円まで働いても生活保護費が減額されない、というわけではありません。

源泉徴収された税金の還付を受ける方法

年末調整による還付
勤務先で年末調整を受けることで、源泉徴収された所得税が還付されます。
還付の時期 通常、12月または翌年1月の給与と一緒に還付されます。
確定申告による還付申告
年末調整を受けられなかった場合や、年末調整後に追加で控除を受けたい場合は、翌年に確定申告を行います。
還付申告をすることで払い過ぎた所得税の払い戻しを受けることができます。還付申告は、翌年1月1日から5年以内であればいつでも可能です。
還付申告の手続き
- 源泉徴収票を勤務先から受け取る
- 確定申告書を作成(e-Taxまたは税務署で紙提出)
- 還付金が指定口座に振り込まれる(通常1〜2か月後)
よくある質問(Q&A)

Q1: 生活保護を受けていることを会社に知られたくありません。年末調整の書類に記載する必要がありますか?
A: いいえ、年末調整の書類に生活保護の受給状況を記載する欄はありません。会社に知られることはありませんので安心してください。年末調整は税務手続きであり、生活保護とは関係ありません。
Q2: 年収が50万円です。所得税が引かれていますが、年末調整で戻ってきますか?
A: はい、年末調整により全額還付されます。2025年の税制改正により、年収123万円以下は所得税非課税となったため、源泉徴収された税金は全額戻ってきます。
Q3: 年末調整の書類を会社に提出し忘れました。どうすればいいですか?
A: 確定申告により還付を受けられます。翌年の1月1日から5年以内であればいつでも還付申告が可能です。源泉徴収票を受け取り、確定申告書を提出してください。
Q4: ダブルワークしています。どちらの会社で年末調整を受ければいいですか?
A: 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している主たる勤務先1か所のみで年末調整を受けます。もう1社からの給与が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要です。
Q5: 年末調整で還付金をもらいましたが、福祉事務所に申告が必要ですか?
A: 還付金は「払いすぎた税金が戻ってきただけ」なので、原則として収入認定されません。ただし、念のため担当ケースワーカーに確認することをお勧めします。

Q6: 生活保護を受けながら働くと、年末調整で会社に生活保護のことがバレますか?
A: バレません。年末調整は税務手続きであり、生活保護の受給状況は関係ありません。会社が福祉事務所に問い合わせることもありません。
Q7: 確定申告をしたら、生活保護が減額されますか?
A: 確定申告そのものが減額の原因になるわけではありません。ただし、確定申告により税務署に収入が把握され、福祉事務所と情報共有される可能性があります。収入がある場合は、必ず事前に福祉事務所に申告してください。

Q8: アルバイト収入が年間30万円です。確定申告は必要ですか?
A: 1か所の勤務先で年末調整を受けていれば、確定申告は不要です。年収123万円以下は所得税非課税のため、年末調整で税務処理は完了します。
まとめ:生活保護受給者も働いていれば年末調整の対象——2つの申告を忘れずに

本記事の重要なポイントをまとめます。
生活保護と年末調整の基本
- 生活保護費は非課税所得→年末調整・確定申告不要
- 給与所得がある場合→年末調整の対象
年末調整が必要な3つの条件
- 勤務先から給与を受け取っている
- 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している
- 年末時点で勤務している
ケース別の対応
- 生活保護のみ:年末調整・確定申告ともに不要
- 1か所で働いている:年末調整のみ(確定申告不要)
- 2か所以上で働いている:主たる勤務先で年末調整+確定申告
- フリーランス:確定申告のみ(年末調整対象外)
2025年税制改正の影響
- 所得税非課税ライン:年収103万円→123万円に引き上げ
- 年収123万円以下は源泉徴収税が全額還付
2つの申告を必ず両方行う
- ①年末調整(勤務先):税務手続き
- ②福祉事務所への収入申告(毎月):生活保護の調整
確定申告が必要なケース
- 2か所以上から給与(従たる給与が20万円超)
- 年収123万円超で年末調整未実施
- フリーランスで所得48万円超
- 医療費控除・住宅ローン控除を受けたい場合
還付申告
- 年末調整を受けられなかった場合は確定申告で還付可能
- 翌年1月1日から5年以内であればいつでも可能
最後に
生活保護を受けながら働くことは、自立への大切な一歩です。年末調整は税務上の手続きであり、生活保護の受給とは直接関係ありません。
ただし、収入がある場合は必ず福祉事務所への申告も忘れずに行ってください。年末調整と福祉事務所への申告は全く別の手続きです。両方を適切に行うことで、税金の還付を受けつつ、生活保護を適正に受給できます。
不明な点があれば、勤務先の担当者(年末調整について)とケースワーカー(生活保護の収入申告について)の両方に相談しましょう。

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